第4章 04
いや、嘘だ。
変わらない笑顔なんて嘘だ。
あの頃よりもずっとずっと可愛らしい。
二年の歳月がそう見せているのか、それとも単純に俺の色眼鏡がそう見せているのかは知らないが、苗字さんの笑顔にどきっとした。
苗字さんってこんなに可愛かったかとの胸中の問いに答えてくれる人は勿論いるはずもなく、どきどきと鼓動が早くなっていくだけだった。
「しかもまた隣の席っスね!」
俺はちゃんと話せているだろうか。
ちゃんと笑えているだろうか。
にやけたおかしな顔になっていたらどうしよう。
そんなだらしのない締まりのない顔をしていたらモデルの名折れだ。
自然に、いつも通りにと口の中で繰り返して平静を保った。と思っているが、本当に通常通りに出来ているのか不安だ。
なんのリアクションもないので、いつも通りの俺でいられていると信じた。
「またよろしくね、黄瀬くんっ」
「こっちこそ、よろしくっス!苗字さんにまた勉強教えてもらえるーっ」
またよろしくなんて言いながらにっこりと笑った苗字さんに困って茶化した。
こうでもしないと抱き付いてしまいそうだった。