第3章 03
以前話を聞いてくれた黒子なら事情を知っている訳だし、また話を聞いてもらおうとこうして会いに来た訳である。
「何がですか?」
「苗字さんの事っスよ!前に話したじゃないっスか!」
それなのに黒子は覚えていなかった上に、あぁとまた何でもないように相槌を打つ。
確かに話を聞いてくれるが、つれない。
思い出してくれたようなのでいい事にして、本題である嫉妬について話を切り出した。
これまでの経緯とこれからの不安を正直に話す。
からかうでもなく茶化すでもなく話を聞いてくれる黒子は、本当に頼りになって有難い。
例え俺の話を忘れていたとしても。
「付き合えばいいじゃないですか」
話を終えてどうしたらいいのか分からないと繰り返し溜息を漏らすと、これまた考えた事もない突拍子な事を言われて何を言っているのか分からなかった。
理解するのに時間を要したが、どんなに時間をかけて考えても結局理解は出来なかった。
何をどう聞いてその結論に至ったのか、頭の弱い俺にも分かるように説明してほしい。
「なんで付き合う事になるんスか」
苗字さんは友人として好きな訳であって、彼女にしたいと考えた事は一度もない。