【おそ松さん】歪んでいるというには、あまりにも深く
第3章 ただ、愛しているだけです
でも、あやちゃんは変わっていった。
トド松とデートを重ねるたびに、あやちゃんは可愛くなっていく。
初めは服装、次に化粧、あやちゃんはどんどん綺麗になっていった。
僕の手の届かない所へ行ってしまう。
気づいた頃には1軍女子になって、僕なんかじゃ絶対手に入らないって思わざるえなかった。
それでもデートにこっそりついていくのをなかなか辞めることができない。
物陰からこっそり盗み見れば、トド松が席を外している間、鏡を何回も見つめて髪を整える仕草。
本屋に行けば、トド松の為にオシャレな店の本を熱心に見ていた。
小物屋にいけば手に取るのはピンク色のものばかりで、ピンク色を見るたびにあやちゃんはとっても優しい顔をする。
健気なあやちゃんに、さらに惹かれていった。
会ったことも話したこともない弟の彼女。
気持ち悪いと言われればそれでおしまい。
でも僕の密かな想いは募っていくばかりで、それだけは僕のものなんだと心に言い聞かせた。
せめてこの想いだけは...。
あやちゃんの幸せを願う事くらい許されるはずだ。
そうでないと心が壊れてしまいそうだった。
そんな不毛な時間を半年ほど繰り返したある日の事、僕はトド松が他の女の人と歩いているのを見つけた。
お友達というにはあまりに親しそうに腕を組んでいた2人。
その光景を見た瞬間、僕はカッとなってトド松を殴った。
力加減をしないで殴ったものだから、その場でトド松は倒れこんだ。
それでもなお僕の怒りはおさまらない、トド松の白いシャツを掴む。
悲鳴をあげることなく冷たい瞳で連れの女は僕を見る。
トド松の顔の表情は帽子のせいで見えなかった。
いや、見る事ができなかったんだ。
僕は怒りをトド松へぶつけた。
「お前ふざけるな!あやちゃんは!お前の事を!お前だけの事を!」
その時わかったんだ。
今僕が吐いている言葉は、僕自身の言葉だと...。
もうすでに、この想いは恋をとうにこえてしまっていることを...。
あやちゃんを愛してしまっているんだと...。