【おそ松さん】歪んでいるというには、あまりにも深く
第2章 ただ欲しいだけです
「こんな、こんな近くにいたのに...」
手を差し出して、彼に触れた。
それでもおかしい、私の愛したトド松くんの肌より少しざらついている。
「どうしたの?少し肌が荒れてるね」
馬鹿でしょう?
トド松くんなわけないのに、それでも芝居を続けてみる。
本当にトド松くんなんだと思い違いを続けたいほどに、目の前の男はトド松くんに似ていた。
「なんでだろう、最近眠れなかったからかな」
ニコリと笑う顔、気味が悪くなるほど似ている。
吐き気がこみ上げてきそうなほどにだ。そして、ジワジワと下腹部が苦しくなっていく。
彼が欲しい...。
トド松くんが、欲しい...。
それが惨めで止めて欲しいのに、馬鹿な私が引き上げた幕を目の前の男は下ろすことがない。
恋人同士がする事なんて一つで、だからこそ下腹部が熱を帯びていくんだろう。自分の肉体でさえ、目の前の男をトド松くんと認識しようとしていた。
「トド松くん、抱いて?」
狂った事をしている自覚はある。
目の前の男は絶対にトド松くんではないとわかっている。
だって彼は、彼は私が抱いてと言ったらとても幸せそうに笑うから。
でも今、目の前の顔はとても辛そうな泣きそうな顔をしている。冷たい瞳をしていた暴君のような男はどこへ行ってしまったんだろう?
「あやちゃん、僕が好き?」
悲しげな顔で何度も何度も私の頬を撫でる偽物のトド松くん、さっきまで冷たい瞳をしていたのにどうして?
そんな悲しい顔をしないで、どうかいつもみたいに笑ってよ...。
「好きよ、愛してる、愛してるよ、トドま...」
言い終わらないうちに唇を塞がれた。
ねっとりと絡みついていくような、そんな情熱的な口付けだった。
手は氷のように冷たいくせに、唇の熱だけは火傷してしまいそうなどに熱く心地よかった。
んっと私から甘い声が漏れる。
音色の零れた小さな穴を見過ごさないうちに、柔らかい舌が自然に入ってくる。