第6章 真昼の夢(十四松)
「6696… 6697… 6698…」
「…十四松くん、わたしもうすぐ春休みが終わるんだよ。4月からは社会人なんだ…」
今日もストイックに素振りをし続ける十四松くんに意を決して話しかけてみる。
彼の動きがその場で止まる。
「最高の春休みだった…十四松くんと遊ぶの、子どもに戻ったみたいで。それに…十四松くんの家で…セックスしたことも…初めての思い出…」
「……」
わたしの独白をただ無言で聞く彼…その表情は、張り付いたような笑顔だけど、その奥には動揺の色が見え隠れしているようだった…
「わたし、十四松くんのことが好き。できれば、わたしが社会人になってもずっと側にいてほしい…」
彼の表情の奥底に見えた動揺の色に、困ったような色も加わる…
どんな返答をくれるのか、全く想像がつかなくて恐い…彼の顔を見られず、俯いてしまう…
「ゆいちゃん、僕ね…ずるい人間なんだ」
思いがけない彼の言葉にびっくりして顔を上げる。
傷ついているような…何かを懐かしむような… そんな表情をしている…
彼の言葉の続きを静かに待った。