第6章 真昼の夢(十四松)
翌日、十四松くんはわたしより早く待ち合わせ場所に着いていた。
わたしの姿を見つけて、いつもの笑顔で手を振ってくれた。
「おはよう、十四松くん早いね。どれぐらい待っててくれたの?」
「う〜ん、10分くらい前かなぁ〜今日は何して遊ぶ??」
「十四松くんのしたい遊びでいいよ」
「そうだな〜まずやきうかな」
いつものように河川敷に行って、十四松くんが素振りをしているところをスケッチする…
「6692 6693 6694…」
相変わらず十四松くんの素振りはすごいことになっている。
「…なんか甘いものたべたいなぁ」
彼の振るバットをぼんやり眺めながら呟くと…
「パフェ知ってる?めっちゃ甘いよ」
真ん丸い瞳でわたしの方を見て、そんなことを言い出す彼…
「え… パフェ?知ってるけど、どうして?」
「前ね、トッティのバイト先で初めて食べたの!そうだ!はんぶんこしよ〜よ!」
そう言った後で、十四松くんはバットを肩に担いで歩き出して行ってしまう。
慌てて後を追いかけた。
着いた先はスタバァだった。
『席に座って待っててね』と言ってくれたので、その言葉に甘えて座っていると、十四松くんがニコニコとパフェとコーヒーをお盆に乗せて歩いてくるのが見えた…
「あはは、はんぶんこね」
はい!とスプーンを手渡してくれる。
「前来たときはね、一松兄さんとはんぶんこしたの。でも、その後で兄さんたちが店の中で暴れてめちゃくちゃになっちゃった。その時に残ってたパフェが溢れちゃって、また食べたいなぁって思ってた」
パクっと口に入れて、「やっぱりあんまぁ〜」と笑う彼…
十四松くんが笑って側に居てくれると心が暖かくなる…わたしもつられて笑顔になる。
十四松くんと笑い合っている時間は、彼が昨日の出来事をどう思っているのか、わたしとこれからどうしていきたいのか、聞いてみたいけど、恐くて聞けないこととか、また今度でいいやって思えてくるのだった…