第6章 真昼の夢(十四松)
次の日、十四松くんはいつもの待ち合わせ場所に現れなかった。
昨日のことを気にしているのは間違いない気がした…
そりゃわたしだってドキドキしたし、そのあと顔を合わせるのはもちろん緊張するけど…
そのことをきっかけに彼に会えなくなるのは嫌だと思った…
十四松くんの家に行ってみよう…
そう思って歩き出す。
一度、一緒に散歩をしていて「これ、僕のうち!」と十四松くんが教えてくれたことがあった。
昭和のにおいがプンプンする木造住宅だなぁと思ったのを覚えている。
確か隣にちょっとおしゃれなカフェがあったはず…
あっ…多分ここだ!
「松」の文字がある…間違いない!
インターホンを探すけど見当たらない…家の周りをうろうろと歩いてみる…ちょっとあやしいかも、わたし…
レトロな形のポストに、ベンチの上にくくりつけられた水玉模様の傘…
ぼんやりと観察していると…
ガタッ
頭の上で音がする。
目を上げると…
「「あっ」」
窓から屋根の上に出ようとしている十四松くんと目が合った…
「ゆいちゃん…」
びっくりしている十四松くん…ああ…来ない方が良かったかな…
「ごめん…十四松くんに会いたくて来ちゃった…」
迷惑だったかな…
「僕もゆいちゃんに会いたかった…いま玄関開けるからっ」
屋根の上から家の中に戻り、ドスドスドス…と玄関まで駆けてくる音が外まで響いている。
はじめて十四松くんの家におじゃますることになってしまった…