第1章 これを恋と呼ぶのなら1(おそ松)
彼と一緒にコンビニの脇に腰かける。
「パチで勝ってもさぁ、気がついたら弟たちに見つかって、いっつも仲良く山分けってことになるんだよぉ。ひどくね?だから一人で一杯やるくらいよくない?って思って、家に帰る前にちょっとだけ飲んでたってわけ。」
「えっと…じゃあいつもいつもパチンコで勝ってるってこと?すごいですね!」
「うぇっ?いゃあ、毎回勝ってるってぇわけじゃないけど…まぁ、飲むのは習慣みたいなもんなんだよね…うん。」
彼の兄弟とのはなし。
笑みを絶やさず話してくれる彼…
右隣に座る彼の頬が近い…男の子なのにつやつやだなぁ…
少し茶色がかった黒髪が陽に透ける…
風のにおいがする…木々が風に揺れる音がする…
仕事に就いてから、こんなふうに風のにおいを感じることなんてなかったな。漠然と思う。
「ビール、飲んでみる?」
彼が笑みを浮かべ、目の前にビール缶を差し出す。
「え…」
唐突でびっくりしてしまう…頬があつく熱を帯びていくのを感じた。
「うん…」
彼から缶を受け取り、ゆっくりと口元に近づける。
「にがいよ…」
「へへっ まだお子さまなのね!」
愉快そうに鼻の下を指で擦る。
彼が こんなうまいもんはない と表現した飲み物…
まだ私には早いみたいだ…