第6章 真昼の夢(十四松)
「君、名前は? 僕、十四松」
「わたしはゆいっていうの」
「ゆいちゃんかぁ!よろしくね!」
自己紹介を簡単に済ませて、わたしたちはやきうを始めた。
やきうとは野球のことだったみたい…なんだぁ。
持って来たバットにわたしをロープで縛りつけて、十四松くんがそのバットで延々と素振りをしつづけるらしい…
バッドに身体を縛りつけてもらい、恐々やってもらったところ、十四松くんがブンブンとバットを振り回す度に車酔いのような気持ち悪さが押し寄せてきて、早々にやめてもらった…
地獄のような素振りだ…でも、彼のお兄さんは毎日これに付き合ってくれているのだそうだ…なんていい人…
わたしにはとても無理だから、普通にキャッチボールをすることにした。
十四松くんの投げる球はとても速くて、うまく捕れないことばかり…走ってボールを追いかけるわたしを彼は「ははははは」という笑い声をあげて、楽しそうに眺めていた。
やきうが終わったら木登りをした。
大きなごつごつした木にするすると登る彼はまるで本物のサルのよう…
わたしもゆっくりゆっくりと登ってみる…
てっぺんが近づくと、少しだけ空を近くに感じる…
「空って大きいね…木登りなんて久しぶり…」
そうつぶやくと、十四松くんがうんうんと頷く。
「身体動かしてたら服乾いた!」
「えっ もう?」
「ははははは 乾いタイムリ〜」
十四松くんと一緒にいると面白いことや驚きがいっぱいありそう…また会いたいな…
「ねぇ十四松くん、わたし3月いっぱいお休みなの。もし良かったらまた遊ばない?」
駄目って言うかなぁ?
「うん、いいよぉ〜!また遊ぼ〜よ!僕も毎日休みだし!」
マッスルマッスル〜と歌い出す彼。
僕も毎日休み??…最後に言った言葉が気になるけど…すっごく楽しい毎日になりそうな予感がした…