第4章 僕は君の猫(一松)
俺の行動範囲は前よりも狭くなった。
なんとく出歩く気がせず、家の中でぼんやりする時間が増えている。
まぁ、もともと俺はこんな感じではあるから、あまり以前と変わらない気もする。
路地裏にいる猫たちに会いに行くことは続けているけれど、ゆいさんと会うかもしれない時間帯は避けていた。
あの白いふわふわの猫、ミーコを見かけることはなかった。
きっとゆいさんのところにいるのだろう…
美味しそうにキャットフードを食べる猫たちをぼんやりと眺める…
「ここにいたんだね」
…懐かしい、柔らかな声が聞こえた。
驚いて顔を上げるとゆいさんが立っていた。
びっ…びっくりした…久々に会ったゆいさんは変わらずきれいで…でも少し痩せただろうか…
「一松くん、聞いてほしい話があるの…お願いだから逃げないで」
やや眉を下げて上目遣いで、悲しそうな表情…そして俺の単純な行動パターンは完全に読まれているようだ…
「わたしの部屋に来て」
彼女はすぐ近くまで歩いてきて、左手で俺の右手を掴んだ。
そのまま、手を繋ぐかたちで並んで歩いた…
…彼女の手のひらは熱くて柔らかくて…少しだけ泣きそうになってしまった…