第4章 僕は君の猫(一松)
「お腹空いたな…」
終わった後で身仕度をしていると、彼女が呟いた。
今日は夕方から会ったから…外はもう真っ暗になっていた。
「一松くん、ラーメンでも一緒にどうですか?」
俺の方に右手を伸ばし、手のひらを見せるような仕草をしてゆいさんは笑顔で誘った。
…なんなんだろう、この人…まったく…
「いっ…行ってもいいケド…」
俯きぎみに返事をする俺…
その右手を握ることは出来なかった…
でも…俺にしては素直になれたつもり…
「行こう行こう!味噌がいい?それともしょうゆ?」
嬉しそうに笑うゆいさん。
俺は先に玄関を出る…なんか顔を見られるのが恥ずかしくて。
彼女はその後をついてくる…
駆け足で俺の隣へ並ぼうとする…
連れ立って歩く夜道は少しだけ風が冷たかった。