第4章 僕は君の猫(一松)
…俺はゆいさんの部屋のリビングの床に腰かけ、白い猫を膝の上に乗せてその背中を撫でていた。
彼女が風呂に入っているうちに逃げ出してしまおうかとも思ったけど……不安よりもエロい期待の方が上回ってしまった感じだ。
それに猫がいると少しは不安は和らぐ…
はぁ…それでも緊張で手足が冷たい…それなのに頭は火照っていて気持ちわるい…
リビングは狭いけれど、よく整頓されていて…いいにおいがした…ソファーの横に小さなテーブル、その向かいに控えめな大きさのテレビがある。
薄紫のソファーの前には白いラグが敷いてあるけど、俺は床に座る方が落ち着いた。
…寝室はソファーの横にある扉の向こうみたいだ…
こんなに緊張してるくせにそんなことを考える俺はほんとクズ…
そんなことを思っていると、リビングのドアノブがガチャリと音を立ててドアが開き、紫色の部屋着姿のゆいさんがひょこっと顔を出した。
「そんな隅っこ座らないでソファーに座ってくれていいのに〜お茶あるから飲んでね」
彼女はカップを持って歩いてくる…笑いながら俺と向かい合うかたちで床に座り、膝を抱える。
ゆいさんは俺の顔を覗き込んでいる…まるでめずらしい動物でも観察するみたいだ…俺はそんな彼女を直視することが出来ず、俯いて冷や汗をかいていた…
「ミーコはね、少し前からうちにいる猫なの。でも、お散歩に行くとなかなか帰ってこない子だから心配で探しに行ったの。その時にきみを見つけた」
「…」
「けっこう気まぐれな子で、なかなかわたしの側にきてくれない。でも、いちまつくんには心を許してるみたいだね。いちまつくんはきっと優しい子なんだね」
ゆいさんは俺の髪をそっと撫でる…
その仕草を3回ほど繰り返し、俺の耳たぶに触れる…
「優しいいちまつくんはわたしの側にきてくれる?」
彼女の指は俺の耳たぶから頬へ移り、柔らかく唇の輪郭をなぞった…
初めての感覚に腰のあたりがぞくぞくとして、下半身に熱が集まってくる…
気がつけばミーコは俺の膝から離れ、ソファーの上で丸くなっていた。
「びしょ濡れのあなたを見つけた時から、そのつもりだったの」
「…っ」
ひどく柔らかいゆいさんの唇が俺の唇を塞いだ。