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【おそ松さん】君に触れたい

第4章 僕は君の猫(一松)


あの日以降も俺は猫の集まる路地裏に猫缶を持って行っている。


あの女の人とはもちろんあれきり会っていない。


何も期待はしてない。


俺の日常はこんなふうにひっそりと過ぎていくものと前世から決まっているのだから。


今日も猫たちと一緒に過ごす。


お腹いっぱいになった猫たちは思い思いに過ごしている。


毛並みを整えてやると気持ち良さそうに目を閉じている…









…ここ3日くらい、あの白い猫を見かけない。


どこかで元気にしてるといいんだけど…














また2日ほど経ったけど、やっぱりあの猫は姿を見せない。


あの女の人のところにいればいいんだけど…どこかでケガしたりしてないかな…












心配になって辺りを探してみるけれど、見つからない。








さっきまで晴れてたけど、雲行きがあやしくなってきたみたい。一旦帰って傘を持ってくるか…

















そう思っているうちに大粒の雨が振り出し、たちまちずぶ濡れになってしまった。


まぁ、そんなに濡れることは気にしないけど…


また晴れたら探そうか…


そう思ったものの、あの猫が困っていないか気になってしまう。


路地裏を覗きに行ってみたけど、見つからなかった。


狭い路地裏から少し広めの道まで戻って来る。


やっぱり帰ろう…そう思い歩き始めたところ…








紫色の傘を指した人がこちらへ向かって歩いているのが見えた。


俺の目の前で立ち止まる。












「びしょ濡れだね…」


あの時と同じ声…あの女の人…?


俺に言っていることなのかな…驚きで軽くめまいがする…


「ひょっとして、ミーコを探してるの?ミーコってほら、あの白い猫」


「…はい」


「ミーコならうちにいるよ、心配させてごめんね。あ、良かったら会いに来てあげて。うちへおいで」


俺の目は、初めてその人の姿を認識した。


白いTシャツにジーンズ、肩までの栗色の髪の毛…


俺よりも歳上だろうか…


「風邪ひいちゃう」


ぼんやりと立ち尽くしていた俺の右手に、女の人の左手が触れ、手を引かれるかたちで歩き出す。


自分ではない誰かの体温が伝わる心地に、頭がくらくらとした…

















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