第3章 これを恋と呼ぶのなら3(おそ松)
赤塚公園まで歩いている間、ほとんど会話がなかった。
彼に会えて、声をかけてもらって嬉しかったけど、どんな話をするのか不安になってくる…
ふたりでベンチに腰かける。ここは、出会った頃によく話をしていた場所…そして…初めてキスをした場所…
おそ松くんは覚えてるかな?
「…えっと…何から話そうかな…」
眉間にシワを寄せて考えて込んでいるおそ松くん…
かと思えば、急に頭を下げた仕草をするから驚いてしまう…
「ゆいちゃん、傷付けちゃってごめん!…色々とゆいちゃんの言ったとおりだからっ…そのっ…とにかくごめん…」
「えっ? そんなっ待ってよ、おそ松くん…どうしちゃったの?」
急に謝るなんて…なんか彼らしくないな…でも、気になってしまう…
「…私の言ったとおりって?」
彼はゆっくりと話し始める…
「俺には自分の世界があるって言ったじゃん…俺はむつごの長男で、同じ顔の弟たちとずうっと一緒で…バカやって生きてきた。でも、弟たちに少しずつ個性が出始めて、趣味もひとりひとり違ってきて、気付いたら、あいつらの考えてることが分からなくなってた…
子どもの頃は考えてることも全部分かったのに。そんなことがあって、大人になった俺のすることは、しなくちゃいけないことは…むつごであり続けることなんだと思った…」
おそ松くんは話を続ける。
「今の俺の在り方は、むつごであり続けるために、俺なりに考えた在り方のつもり。でも、簡単に言ったら、ただ責任逃れをして、大人になりたくないってただ悪あがきをしているだけなのかもしれない。特に、ちゃんと仕事をしてる人にとってはね…」
「俺はこんな人間で、これからもこうやって生きてくんだと思う。でも、ゆいちゃんと過ごした時間の中で、考えることがたくさんあった。俺は変わらなくちゃいけないって漠然とだけど思った。」
話しているおそ松くんをぼんやり見つめながら、これは夢なんじゃないかと思った…だって、おそ松くんがこんなことを言ってくれるなんて…