第3章 これを恋と呼ぶのなら3(おそ松)
日曜日はいつも通りに買い物や掃除をして過ごしていた。天気がいいから洗濯がはかどる。
…彼と一緒におうまさんに会いには行かなかった。
…駅に行っても会えるとは限らないよね…でもそれくらいの軽い感じがちょうどいいのかも…と無理やり考えようとする。
時刻は午後に差し掛かろうとしている、パスタでも作って食べようかと思っていたところ…
ピンポーン
チャイムが鳴る。
「はい」 応答すると、
「俺だけど…」 予測しなかった彼の声…
驚いて玄関のドアを開けると、赤色のスタジャン姿のおそ松くんが立っていた。
「どうしたの?!競馬に行かないの?」
「…やめた」
「どうして?」
「ゆいちゃん待ってたのに、来ないから気になって来てみた」
「ごめんなさい…でも行けたら行くって言ったから…」
「俺は行く気だったよ、ゆいちゃんとおうまさん」
「…」
こんな時、何と言えばいいんだろう?彼のことを色々考えて、行動を分析してみたりしたけど、結局どうしたらいいのかいつも分からなかった…
ただ、私はおそ松くんと一緒にいたいだけ…
でも…私の返答によっては、おそ松くんとの関係は終わりになってしまうおそれがあるのだ…
そんなのこわい…
どうしよう…
涙が溢れてくる…
「えっ!どったの?」
おそ松くんが焦った声を出す。
ぽろぽろとこぼれ落ちる涙…おかしいな…こんなに泣けてくるなんて…
「…おそ松くんのことが大好き…もっともっとおそ松くんのことを知りたい…でも、そんなことを言ったらもう会ってくれなくなるでしょう?」
「えっ そんな…」
「なんて言うか…おそ松くんには自分の世界があるの…その世界の中に…私の居場所はないこと…知ってるから…」
こんなこと言うつもりなかったのに…でも…ただ一緒にいたいだけなんて嘘だった…
「私も…おそ松くんの世界の中のひとりでありたい」
その後、おそ松くんは何も言わずに帰ってしまった。
抑えていた気持ちが溢れて言葉になった…でも、おそ松くんのことを責めてしまうかたちになってしまった…
もう会ってくれないだろうな…
晴れていたはずの空は灰色の雲に覆われていた。