第3章 これを恋と呼ぶのなら3(おそ松)
「おうまさんに会ってみたいな」
抱き合った後、帰る仕度がもうすぐ終わりそうなおそ松くんにそう話しかけてみる。
「えっ興味あったりするの?行ってみる?」
どうせ、また機会があればね〜とか、いずれね〜ってはぐらかされると思ってたから、ちょっとびっくりしてしまう。
でも…ここで驚いたところを見せると、きっとおそ松くんは警戒する気がするからナチュラルにいかなくちゃ…と直感的に思った。
「うん、今度いつ?」
「日曜はパチじゃなくておうまさんのつもりだけど…」
「おそ松くん、いつも午前中から行くでしょ?もし気が向いて、駅で会えたら行く〜」
「…おぅ」
「おやすみ~」
「…おやすみ」
パタン…
彼が玄関から出ていく。
はぁ…ちょっと警戒してるかな。ナチュラルって難しいな…
ため息をつく。
おそ松くんはあぁ見えてガードが堅い。
自分の世界に何か別のものが入り込もうとするのを防ごうとするのだ。
だからいつも警戒して過ごしているから、彼に何かを求めたりすると簡単に関係は壊れてしまうと思う。
明るくてニコニコしてるように見えて、こんな難しいひとはいない…でも、むつごの長男として育った特殊な生い立ちのせいなのかな、とも思った。
きっと、今まで関係を持った女の子たちは彼に求めてしまったのだろう…気持ちや時間を共有することを。
好きになったら、自分の気持ちをさらけ出して分かりあいたいと思う…
でも、おそ松くんと一緒にいるためには彼と一定の距離を保たなければいけないのだ。
自分の気持ちを彼にぶつけるなんて、私には恐くてできない…
おそ松くんと一緒にいたいから…
…競馬に一緒に行ったら警戒して距離を取られるかも…行きたいけどな…
…やめとこう…
…こんなことばかり考えるの、ちょっと疲れたな…
彼の残り香のするベッドに潜り込み、目を閉じた。