第2章 これを恋と呼ぶのなら2(おそ松)
ふたりで買い物帰りに商店街を歩く。
「…あの映画なら、明日テレビで地上波で初めて放送されるんだよ。一緒に観ようよ!」
観たかった映画の話をしながら、きっと明日も会えるんだと思っていた。でも…
「明日は予定あんだよね…」
「あっ…そうなんだ…どこか行くの?」
「うん、幼なじみの女の子に会いに行くんだ〜」
にへらぁと効果音のつきそうなおそ松くんの顔…
「…そうなんだ…どんな子なの?」
「トト子ちゃんっていってさぁ、超絶かわいいのぉ。昔っから俺らむつごのアイドルでさ、かわいすぎて本当にアイドル活動始めちゃってさ〜」
「…」
「そんで、いっつも6人で遊びに行っててさ、デートに誘うんだけど、まぁつれないつれない。でもそこがまたかわいくてさぁ〜」
たくさん話してくれるおそ松くん…そんなに好きな子がいたなんて、知らなかったな…
「そんでさぁ、今日は何食べよう?俺、焼きそばリクエスト!」
いつもの調子でそんなことを言うから、何も言えなくなってしまう。
その子との関係がうまくいけば、彼は私に見向きもしてくれないんだろうな…
つい自虐的になってしまう。
「あいつらさぁ、酒場で焼きそば頼むと怒るんだよね、まだ来たばっかなのに炭水化物頼むなって。別によくね?食いたいもん食いたいときに頼めばさ」
弟さんとのやり取りを話す彼の隣で、私の笑顔はひきつっていたと思う。
彼と弟さんとの関係で感じたことがある。
…いつだったか「俺たち、6人揃って童貞なんだぜ」と笑っていたけど…きっとおそ松くんは私に会う前から童貞じゃない。
弟さん達と足並みを揃えておきたいんだろうなと、漠然と思ったのを覚えている。
なんというか…そういう機会があっても、カウントしてないだけなんじゃないかな。
だから私とのことも、きっと数に入っていない。