第2章 これを恋と呼ぶのなら2(おそ松)
彼はスマホや携帯電話を持っていない。
ではどうやって会うのかというと…私が仕事帰りに赤塚駅に降り立ったタイミングで彼が赤塚駅にいてくれたら、そのまま一緒に家まで帰るという感じ。
彼がいなければ、もちろん会えない。
でも、高確率で駅にいてはくれる…
帰り道、彼の弟さんの話をする。
「チョロ松がさぁ、ハロワ行けってうるさくてさ。行ったら行ったで追い返されるし、行くだけ損なんだよ。でも、一仕事のあとのビールは最高なんだよな」
笑顔を向けてくれると、素直に嬉しくなる。
よく行くという、幼なじみがやっているおでん屋さんの話もしてくれた。つけがきくし、味もいいという。
「私も行ってみたいなぁ」
「う〜ん、いずれね。あ、そういやぁさ…今日、何食べる?俺、チャーハンがいいっ」
こんな具合に話をはぐらかされてしまうことばかり。
おそ松くんと私の関係に呼び名をつけるならば…
認めたくないけれど、きっと「セフレ」なのだろう。
でも、つい期待してしまう…
おそ松くんが駅にいてくれるから。
ふたりでチャーハンを食べた後で、満足そうな顔をして「ゆいちゃん〜俺チャーハン食べてお腹いっぱいになったから、ゆいちゃんと寝たくなっちゃった」と言ってくれるから。
ベッドで熱の籠った、潤んだあの色っぽい瞳で見つめてくれるから。
ひょっとしたら、私は彼にとって特別な存在なんじゃないかと…
でも知ってしまった…
彼には簡単には触れないほど大切な幼なじみがいることを。