第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)
3ヶ月。
100日足らず。
久しぶりにこんなに
バレーに向き合った気がする。
あの後の合宿で、
俺は、強化組にあがった。
でももう、さすがに、
『俺が本気出せばこんなもんだよ』
…なんていうほど、ノー天気ではない。
ここから更に勝ち上がらなければ
コートに立つことは出来ない。
今度は追われる立場でもある。
セッターという少ない枠を目指して
後ろから常に追いかけられる。
木兎は。
もちろん強化組のままだ。
むしろ、
やっと追い付けたと思ったのに、
木兎はやっぱり一歩先を行く。
Vリーグに内定が決まったのだ。
"ヨントリーシャイニング"
古くからある強豪チームで
日本代表のスター選手も多く所属している。
…大丈夫、焦らない、焦らない。
一つづつ、一つづつ、だ。
やるべきことを全力でやることしか
俺に出来ることはないんだから。
と、自分に言い聞かせる。
そして、チラリと思うのだ。
綾ちゃん、焦ってねぇかな。
1年に1度しかチャンスがない
国家試験に賭ける綾ちゃん。
自分が浪人している間に
木兎は一歩どころか二歩、進んでいて。
真面目な子だからこそ、
その差に苦しむんじゃないだろうか。
だって彼女は、俺に似てるから。
あれもこれもは出来なくて。
都会に来てみて、改めて
自分の小ささに苦しんで。
木兎の眩しさが大好きなのに、
それに追い付けない自分に
なんだか引け目を感じてて。
きっとこんな感情は、
木兎には、わからない。
むやみやたらに励ましたりしたら
却って傷付くはずだ。
…あの二人、大丈夫かな?
自分が強化組に入ったから、
勇気を出して、聞いてみる。
『ねぇ、コタローちゃん、』
『なんだぁ?』
『そういえば、綾ちゃん、どーしてんの?』
『…あぁ、頑張ってるよ。』
『そっか。』
『オイカワ、会ってねぇの?』
『会ってないよ。いつからかな…
あぁ、あの強化組の最初の合宿があって
コタローちゃんがいなかった時以来。』
『3ヶ月?』
『うん。俺も余裕なかったからさ。』
『そっか。』
『…』
会話が、続かない。
先に口を開いたのは、木兎。
『なぁオイカワ、
バレー選手以外になろうと思ったこと、ある?』
『?』
これは、
綾ちゃんと関係ある話に繋がるんだろうか?