第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)
考える。
遡って、遡って…
『すっげーちっちゃい頃は、
なんかのヒーローになりたかった気がするけど。』
小学校でバレーを始めてからは、
バレー以外の将来は考えてなかった。
卒業文集にもずっと、
『プロ』『日本代表』を書いてきたし
自分はもちろん、チームメイト達も
当たり前のようにそう思ってくれてた。
『バレーをやるのが当たり前だって
思ってたね、確かに。』
俺がそう口にすると、
木兎も答える。
『俺もさ、バレー以外の選択肢、
真剣に考えたこと、ねぇんだ。
楽しいしさ、そこそこやれるじゃん。
これやらないで、何やるの、って感じ。』
…言葉はちょっと軽いけど(木兎らしい w)
俺も確かに同じ感覚だ。
だから、うん、わかる、と頷いた。
『…だけどさ、綾みたいに
医者になりたい、っつーのは、
全然違う選び方なんだよな、って。』
『そうかな?』
『最初から医学が好きだからって
医者になるヤツ、多分、いないだろ。
だって、やったことねぇんだもん。』
『…そりゃそうだけど。でも、
仕事ってだいたい、そうじゃん?』
どっちかといったら、
俺らの方が特殊、というか。
好きでやり続けてきたことで
プロになることの方が。
『"楽しい"以外の理由で仕事選ぶ感覚、
スゲーって、綾見てて思い始めて。』
『…へぇ。』
『…たった1回のミスで、
命が消えたりしちゃうんだぜ。
俺がスパイクミスしたら誰かの命が
消える、とか言われたら、
俺、もう怖くて、コート、立てねぇもん。
それくらいの覚悟で仕事を選ぶって、
スゴくね?』
『考えすぎじゃん?』
『でも、
医者は絶対、世の中に必要な職業だろ?
いい医者、一人でも多い方がいいじゃん。
…そう思ったらさ、
綾を遊びに誘うの
しばらくやめようかな、って
思ったりもしててさ。
とりあえず、合格するまで。』
木兎なりに、考えてる。
でもそれを
綾ちゃんが望んでいるかどうかは
また別の問題で。
『確かにそれもそうだろうけど、』
俺は思う。
俺と似てる性格の彼女のことだから、
きっと綾ちゃんは、
木兎に我慢させることを
後ろめたく思っているはず。
自分は木兎の彼女に
ふさわしくないんじゃないか、と。