第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)
バレーがやりたくてやりたくて、
集中したくてしたくて、
…必ず、
JAPANのユニフォームでコートに立つ。
木兎にトスをあげるのは、俺だ…
直近の目標を
3か月後の強化昇格に設定してから、
俺は敢えて、
二人のことに関わらないようにしていた。
木兎とは
この先もずっと相棒でいたいし、
綾ちゃんのサポートは
彼氏である木兎がやるべきこと。
俺は、
お節介するにはあまりにも
自分が未熟だ。
他人のことを言える立場じゃない。
だから
木兎にも綾ちゃんのことは
あれきり聞かなかったし、
綾ちゃんにも、
あれきり連絡をとらずにいた。
まるで
木兎と綾ちゃんが出会う前…
木兎と俺が出会った頃のように、
二人で毎日、練習して
時々二人で、遊びに行く。
木兎には相変わらず
男も女もたくさん友達がいるし、
俺だって相変わらず
あと腐れなくつきあえる女の子達と
節度をもって?!遊んでる。
人のこと、構ってる場合じゃない。
みんな、自分のことで精一杯。
俺も、木兎も、綾ちゃんも、
限られた枠のある"上"を
目指すと決めた者にとって、
人の心配をしてるようじゃ
追い抜かれていくだろ。
…そんな風に考えながら。
もしかしたら、わざと
心を閉じていたのかもしれない。
小さな違和感に気づいてしまったら、
また、あの苦しかった日々に
戻ってしまうことになりそうで。
…木兎から全く、
『綾』の言葉を聞かないのは、
うまくいってるからなのか。
うまくいってないからなのか。
俺に気を遣っているからなのか。
それとも
俺に気を遣っていないからなのか。
『綾ちゃんが、』
『綾がさぁ…』
毎日、そう聞かされていた
一時期のことがウソのように、
木兎の口から
彼女の名前を聞くことはなくなっていた。
それでも相変わらず、
毎日は過ぎていく。
波風のない日々は、
穏やかで、ありがたい。
でも、
越えるものがない日々には、
前に進んでいる手応えもない。
来い。
早く、来い。
次の強化合宿。
俺が1つ、壁を越えたら
…綾ちゃんに報告できる結果を
手に入れられたら…
木兎に聞いてみる。
『最近、綾ちゃん、どうしてる?』
…って。