第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)
そして、
トビオと同じくらい気になる
"もう一人"のことも、
聞かずには、いられない。
『…そういえば、綾ちゃん、どうしてる?』
出来るだけ、さりげなく。
ついで、みたいに。
たった今、ちょっと思い出した、
みたいな感じで。
『…あぁ、ありがとな。
及川に励ましてもらったのに
相当、救われたみたいだよ。』
『別に、励ましたわけじゃないけどね。
ダメ組同士でいたわりあっただ…』
『ダメ組、とか、言うな。』
俺の言葉を遮る、木兎の声。
『二人とも、まだやれることあんのに、
簡単にダメとか言うな。』
いつになく、キッパリとした、
有無を言わせぬ、強い意思。
ふざけて返せる雰囲気ではなく。
『…ごめん。』
『あ、いや、てか、いやいや、』
瞬時に、いつもの木兎に戻る。
『まだ生きてるんだからさ、
いくらでもやり直せるじゃんっ。』
"おおげさだなぁ(笑)"
…って言えない説得力があって、驚く。
『そうそう、そうだよ。
むしろ俺も綾ちゃんも、これから!
コタローちゃんだって気を抜いたら危ないよー。
育成組、みんな、
上を狙ってギラギラしてるからねっ。』
『おうっ、
オイカワと一緒じゃないと
女の子の観客が半減するからさぁ、
イマイチ盛り上がんねーわ、俺的に。
二人で日本中の女の子、シビレさせてやろーぜ!』
…あぁ、好きだ。
木兎のこういうところ、大好きだ。
『ほんっと、コタローちゃんといると
ワクワクするねっ。
待ってなよ、すぐに俺が
コタローちゃん専用のトス、あげるよ!』
女を挟まなければ、
こんなにスッキリと繋がれる。
もうしばらく、
とにかくバレーでテッペンとるまでは
この気持ちで仲間でいたい。
だから。
『コタローちゃん、』
『ん?』
ざわざわ、と体育館の入り口が
騒がしくなってくる。
部員が集まり始めた。
『あ、及川先輩だ!』
『お疲れ様です!』
『あぁ、二人が揃った~!』
近づいてくる後輩たちに
軽く笑顔で手を上げて。
歩きながら、木兎に言う。
『俺は、大丈夫だから。
コタローちゃん、綾ちゃんのこと
しっかり見ててやんなよ。』
『だな。』
一週間ぶりの体育館。
何事ともなかったかのように
俺たちは、コートに立つ。
…木兎とするバレーは、
やっぱり、気持ち、よかった。