第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)
『ぇぇと、木兎、君だよね?
俺ら、多分、初対面だよね?』
『だなっ!』
『…相棒って?』
『あかーし、いっこ下で、』
『アカーシ?』
『あ、か、あ、し。
俺の高校の頃のセッター。
まだコーコーセーなわけ。』
『へぇ。』
『そんでさ、
俺、大学でどーしよーって困ってたら
みんなが、"及川がいるらしーから"とか
"及川なら大丈夫"とか言うワケさ!
だから、俺、決めてたの。
な、新しい相棒、ヨロシクなっ!』
もう、勝手に決めてるらしい(笑)
ハイ、わかりました、って
素直に引き受けるのも
シャクな気はするけど…
全国五本指のスパイカーだ。
トスをあげてみたい気持ちは
俺だって、正直、アリアリ。
『ん?ちょっとまって。』
今にもコートに飛び込んでいきそうな
木兎のシャツをつかんで、
もう一度、俺の横に並ばせる。
『俺、ツナギのセッター?
その後輩君が来年、ここに来たら
どーするつもり?』
『あ、それはナイナイナイ。
あかーし、ここには来ねぇから。』
『なんで言い切れる?相棒だろ?』
さほど残念そうでもなく、
もう、動きたくてたまらない顔で
木兎は、言った。
『あいつ、家がフクザツでさ。
大学では建築を勉強しなきゃなんねーから
この大学には来ねーんだって。だから俺、
新しい相棒が、どーしても必要なの。』
スパイカーにとって、
息のあうセッターは何より大切な存在だ。
『…相棒と離れるの、残念じゃない?』
キョロ、と、鳥のように
大きな目が俺をのぞきこむ。
まっすぐで眩しい、光をたたえた、目。
迷いのない、明るい、力強い、目。
『だってしょーがねーじゃん?
みんながバレーで生きてけるわけじゃ
ねーからさっ。
アイツらはアイツらでやることあるし。
だから俺、あかーしとか木葉の分まで
大活躍してやる、って約束してんだよね。
お前となら、俺、イケそーな気がする!
…な、な、な、早く俺にトスあげてっ!』
コノハ、ってのもきっと、
チームメイトの名前のことなんだろう。
まっきーとか、まっつんみたいな
存在だな、きっと。
なんか、ちょっとノリは軽いけど(笑)
お互い
今までの相棒の分まで活躍したくて、
そのために必要な新しい相棒を探してて。
『…やってみよーじゃん。』
そんなわけで、
俺が東京で最初にトスをあげたのは、
木兎だった。