第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)
…衝撃的、だった。
白鳥沢と烏野に阻まれて、
結局一度も全国に行けなかった青城。
こうして全国レベルと直接接してみて、
改めて、
自分の目指す道のりの厳しさを知る。
これで…木兎でさえ…
"三本指"に入らないとは。
(まぁ、それが技術以外の理由としても 笑)
一瞬、身震いがした。
怖くて、じゃない。
ワクワクして、だ。
こんなヤツラと同じチームになる。
新しい武器を手に入れた気分。
木兎は、牛若とは違うタイプ。
あんな宇宙人的な(笑)エースじゃない。
岩ちゃんとも、違う。
(むしろ、正反対。)
こだわりをもった職人的エースでもない。
木兎の魅力は"人間くささ"。
バカみたいに明るくて、裏表がない。
バレーが好きで好きで、
練習が楽しみで楽しみで、
そして何より、
セッター次第で個性が光り輝く。
気分が露骨にプレーに表れるのもご愛敬。
今まで俺の周囲にはいなかったタイプの
"華のある"スパイカーだ。
そんで、俺と木兎、
…コタローちゃん、って俺は呼んでる。
岩ちゃんみたいに呼ぶと"ボクちゃん"だし
まっきーみたいに呼ぶと"ボッキー"だし
どっちもさすがに人前じゃ呼べない(笑)…
そう、俺と木兎が揃えば、
女の子達の熱い視線と黄色い声援は
ここに集まるわけで。
『な、及川!あの子、
ずーっと俺のこと、見てるっ!!』
『え?あれはコタローちゃんじゃなくて
俺を見てるんだよ。』
『えーっ?俺だって!』
『コタローちゃんのファンは
もうちょっと派手なコじゃん。
ああいう清楚なタイプは、
及川さんみたいな王子さまキャラが
好きなんだってば。』
『なんだとー?!
俺もたまには清楚系に惚れられてみたい!』
『…かっこいいスパイク決めまくったら、
もしかしたら俺よりコタローちゃんに
惚れちゃうかもしんないけどね…』
『そうかっ?!よしっ、及川っ、
今日は俺に全部、トス、集めろっ!』
…岩ちゃんだったら
秒殺で俺をぶん殴ってきそうな
アホ同士の会話に聞こえるけど、
これはほんの暖気運転。
こうやって充分、
木兎のヤル気を暖めておけば
試合ではそのパワーが
…そもそも実力は申し分ない…
存分に発揮されるんだからありがたい。
こうしてお互い新たな相棒を得た俺たちは、
健全なスポーツマンシップにのっとり?!
昼も夜も、つるんで過ごした。