第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)
『綾ちゃん、
コタローちゃんのこと、大好きだもんね。』
バカな質問だってわかってるけど。
『うん…だから、頑張らないと。
光太郎君に気を使わせるようじゃ、
彼女、失格だよね。
光太郎君らしくいられるように
サポート出来るくらいじゃないと。』
返事をする綾ちゃんの左手は
胸元のネックレスを触っていた。
俺が選んで、木兎が贈ったプレゼント。
ここにいなくても
木兎は綾ちゃんの心の真ん中にいて
ここにいても
俺は、綾ちゃんの中には、入れない。
『…俺も、考え方、変えてみようかな。』
『ん?』
『例えばさ、
自分のためじゃなくて、
誰かのためにバレーを頑張る、とか。』
『誰かのためって?…光太郎君?』
『コタローちゃんは、
俺がいなくたっていいじゃん。』
『そんなこと、ないと思うけど…
他に、誰のためなら頑張れるの?』
冗談みたいに言ってみる。
『…女の子のため、とか。』
『及川君らしい(笑)
やっぱりいるんだ、そういう人。』
言ったら、どうなるんだろ?
『いないよ。いないからさ、
…例えば、綾ちゃんのため、とか。』
『…慰めてくれてるの?』
あぁ、今、言っちゃいけなかった。
『ごめん、そんなつもりじゃ…』
『ありがと。慰めでも、嬉しい。』
俺はやっぱり、サイテーだ。
自分のことしか考えてない。
『光太郎君とか及川君みたいな
すっごい人と出会えたこと自体、
私の地味な人生からしたら、
既にあり得ないことだもんね。
…今夜はホントにありがと。
心配してくれて、待っててくれて、
慰めてくれて、嬉しかった。
…頑張らなくちゃね、私たち。
光太郎君に、追い付かなくちゃ。』
何も、言えなかった。
木兎に追い付ける気がしない。
何もかももってる、アイツに。
『綾ちゃん、俺さ、
結局、こうやって負け組だけど、』
『…負け組なんて、言わないで。
それを言うなら、私こそ負け組。』
『…勝ち組のヤツにはわからない気持ち、
俺、わかってあげられると思うから。
今日みたいに、
コタローちゃんに言えない弱音とか、
俺が聞く。俺に話して。
いつでも。何でも。ね?』
…今、言える、俺の、精一杯。
いい人でいる、ギリギリの我慢。