第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)
『…落ちた。』
綾ちゃんが、ポツンと言った。
『俺も。』
俺も、ポツンと返す。
『及川君は、落ちてはいないでしょ?』
『強化の18人に入れなかったってことは
俺にしてみれば落ちたのと同じ。
…よりによって
一番、ぶっ潰したい後輩が
コタローちゃんの相棒になるし。』
今ごろ、曲者たちが
木兎を真ん中にして、
際限なく、賑やかに、自主練してんだろう。
…今日、俺はボールに触ってない。
この1日で、また、差が開く…。
『…田舎の、』
綾ちゃんの口から溢れた言葉が
予想外の響きで、思わず、聞き返した。
『え?イナカ?』
『…うん。あ、突然でごめんね。
弱音、吐いてもいい?』
『うん。』
目の前にいるのは、
木兎といる時の
明るくてキラキラした彼女じゃない。
俺は、あんな風に照らしてはあげられない。
でも、
どんなに小さな光でも
俺のそばなら、ちゃんと見える。
…俺が、闇だから、ね。
そのままの綾ちゃんの光で、充分。
ポツン、ポツン、と
言葉がこぼれてくる。
『田舎の高校だったから、
ちょっと成績いいだけでチヤホヤされて。
でも、東京、出てきたら、
私レベルなんか、掃いて捨てるほど…
ほんと、典型的な田舎の甘ちゃん。』
『…俺も、』
今まで、認めたくなくて
1度も口にしたことない言葉を
ついに、言ってしまう。
『宮城でだって一番になれなかったのに、
日本代表、目指す、なんて。
一人じゃ自信なくてさ、
コタローちゃんと一緒なら、って思ってたけど…。
コタローちゃんは、俺がいなくても
自分で光れるヤツなんだよね。
"一緒に"なんて仲良しこよしで
上がっていけるほど、
勝負の世界は甘くないや。
わかってるつもりだったのに。』
口にしながら、
なぜだか心が軽くなる。
あぁ、なんだかスッキリ。
ずっと心のなかに押し込めてきた
見たくない現実。
トビオみたいな天才でもなく
コタローちゃんみたいな
愛されるスターでもない。
顔がいいだけ(笑)の
なんちゃってヒーロー。
だから、
『綾ちゃん、いっぱい、弱音、吐いてよ。
…コタローちゃんには言えないこと、あるだろ?』
わかるんだ。
眩しいヤツの前にいると
自分が小さく見えるから、
必要以上に頑張ってしまうこと。