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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)



電話は、出来なかった。
きっと、
気丈に明るい声を出すに違いない、
と思ったから。

会おう、とも言えなかった。
きっと、
会いたくない、とも
言えないだろうから。

LINEで、

『明日、夜、あのbarにいる。
気が向いたら、おいでよ。
コタローちゃんには言ってあるから
そこは心配しなくてOK。』

彼女の負担になる言葉はないか?
何度も何度も確かめて、

送信、した。

その画面をしばらく見つめて、
ふと思い付き、もう一文。

『俺も過去最高に落ち込んでるから
お互い、気遣い、なしね。』

俺のことはどーでもいい。
だけど彼女が、慰められるのがイヤで
来るのをためらうかも、と思ったから。

送信。
…そして、すぐにもう一言、付け加える。

『返信、不要。』

ここまで送って、
スマホをカバンの一番下に押し込めた。



その日の体育館は、
俺にとって、地獄の入り口だった。

『木兎先輩!強化メンバー入り、
おめでとうございます!』

みんなが、そう言う。
木兎だって、心中穏やかでなくても
いつものキャラで
答えないわけにはいかない。

『おうっ、ありがと!
オリンピックは俺のためにある!』

そしてその次にみんな、
必ず、こう付け加える。

『及川先輩も、おめでとうございます。
育成枠だって、スゲーですもんね!』

本心なのか、
木兎の横にいる俺にも
何か言わなくては、と
気を遣ってるのかわからないけど、

とにかくみんな、そう言う。

『ありがと。
顔だけなら強化枠入りなんだけど(笑)』

『俺が強化枠に入っちゃうと
他が目立たないからね。
俺は育成枠くらいで充分、充分。』

…思ってもいない言葉を
得意の及川スマイルで
何度も何度も口にする。

木兎とコートに入れば、
"強化と育成の注目コンビ"みたいに
いつも以上に注目されてる気がして。

木兎も…あの木兎でさえも
俺に気を遣ってるのがわかる。

疲れる。
本当は、離れたい。
多分、それは、お互いに。

でも、大なり小なり、
注目されるというのはそういうことだ。

明日からは、しばらく、木兎は、いない。
明日からは、しばらく、離れられる。

今日、あと何時間かだけの、辛抱だ。

苦痛でしかない練習が終わり
木兎より先に体育館を出た。

すれ違うとき、
『綾を、頼む。』と声が聞こえた。

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