第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)
『俺さぁ、』
空を見上げたまま、木兎が言った。
…誰かを思い出すように。
『キレイゴトみたいに
聞こえるかもしんないけど、
"後悔しないように生きる"って決めてんだよね。
そんで、俺と関わる人にはみんな、
"俺と出会えてよかった"って思ってもらいてーの。
そのためにも、ウソ、つきたくねぇから。』
『…キレイゴトなんかじゃないよ。
コタローちゃん、そのまんま生きてる。』
後悔しないように生きる、なんて
言葉にするのは簡単だ。
それを、あれだけ全力で
毎日、実行出来ることが
既に、木兎の才能の1つ。
『だから、オイカワも
俺に言いたいことあったら、
遠慮しないでちゃんと言えよな。』
…俺の気持ちに
気づいてるんだろうか?
『言いたいこと、って?』
『例えばさぁ…』
さっきまで空を見上げてた顔が
キュッとこっちを向いて。
月の光を蓄えた瞳が、金色に見えた。
…一瞬、身がすくむ。
眩しすぎて、怖い。
捕獲、されそうだ。
『綾のこと…』
え…
『ばっかりかまってねぇで、
俺とも遊んでくれよ、とかさぁ。』
…心臓、一時停止。
そして、やっと、動き出す。
『…ア、アハハ…そうだね。
最近、コタローちゃんと二人では遊んでないね。
…久しぶりに、今からちょっと
夜の街のパトロールでも、行っちゃう?』
『だなっ!
たまには俺らが出動しないと、
この辺りのオネーチャン達が
寂しがってるかもなっ。
よし、久々、騒ごうぜっ!』
ピョン、と
飛び上がるように立ち上がった木兎が
前を歩き出したから、
あわてて俺も立ち上がり、
その後ろ姿についていく。
…言うなら、今、だろうか。
"俺も、ウソ、つきたくないんだ、
綾ちゃんのことが好きだ"
…って。
『ね、コタローちゃん、パトロールの前にさ、』
『んー?』
振り返った顔。
闇まで明るく照らすような、
眩しい瞳。
立ち止まったその距離は
遠くも近くもなくて…
このまま、
離されたくない、と思ってしまう。
木兎と、綾ちゃん。
どっちが大事か、と聞かれたら、
どっちが大事か、と答えるなら、
どちらか1つしか手に入らないなら、
順番をつけなければならないとしたら。