第8章 ~ネコ達、恋に大騒ぎ。~
『…リエーフ、黒尾先輩は、
あの子とつきあうことになったのか?』
『いや…黒尾先輩、
"俺、今カノジョいるから付き合えないけど
俺のこと好きでいてくれる分には
全然、かまわないからね~"
…みたいなこと言ってましたよ?』
『なんだ、そのゼイタクな対応!
俺はそんなこと、1度も言ったことねぇ…
俺と黒尾先輩、何がそんなに違うんだ?!』
みんなが思わず
“全部だよっ!”と
総ツッコミしそうになった言葉を
グッと飲み込んだ一瞬の沈黙を破るのは、
やっぱり研磨君です。
『トラは、どう考えてもガッつきすぎだよね。
その勢いで迫られたら、誰だってヒクよ。』
『そりゃお前、
黒尾先輩みたいに、何もしなくても
女の子が行列作って待ってくれてる人とは
俺は違うからなっ!
自分から狩りに出ないとっ!』
『うるさすぎて獲物逃がすとか、
狩りの才能、ないんじゃない。』
『うぐっ…』
反論の余地ナシの山本君を
誰もフォロー出来ないでいると、
『あ、外、雨、降り出したんじゃないっすか?
ヤバ、研磨さん、練習、早くしましょうよ!』
その場の空気なんて関係ない灰羽君の
ムダに明るくエネルギッシュな声に、
『…バカか。
バレー部に、雨、関係ねぇだろ…』
山本君が、打ちひしがれた声で答えます。
『山本先輩、何言ってるんすか!
女テニ、春から顧問が代わったんですよ。
今までは雨が降ったら部活、休みだったけど
今度からは、雨の日は体育館の2階で
ランニングとか筋トレするらしいっすから。
絶対、バレー部の練習、見ますって!』
『リ、リエーフ…それは本当かっ?』
『ウソついてどーすんですか。
ああっ、今日は特に急な雨だから、
ここに来るまでに濡れたりして、
ブラが透けて見えるかも!』
『なにっ?!
よ、よーし、研磨、早く練習するぞ!
俺にどんどん、トスあげてくれっ💨』
『いやいや、先にブロック練からでしょ!
俺の鉄壁瞬殺完璧ブロック見せて、
女子のハートをぶち抜きますよ!』
『ば〜かっ、ぶち抜くのは
ブロックじゃなくてスパイクだろ!』
あっという間に失恋の傷も癒えたらしく
闘争心100%に充電完了したらしい二人は、
また大声で吠えあい、
お互いを牽制しながら
転がるようにコートに走っていき、
…残された人の輪には、
静けさが戻ってきました。