第8章 ~ネコ達、恋に大騒ぎ。~
恋する女子っぽく少しうつむきながら、
それでも
照れつつ熱い視線で
体育館の中を指差す彼女。
つられるように、
その指先が示す方向へと
全1年2年の首がぐるーっと動きます。
指先の人物を確認した瞬間、
まずは灰羽君が山本君を見て
なぜか勝ち誇ったようにニヤリと笑い、
そしてその他の集団からは
『あぁっ!』
『あぁ、』
『あ…』
『あ~』
…と、悲鳴、納得、同情などなど
それぞれの思いのこもった声が漏れました。
『そうだよね。』
『なんか、納得っす。』
『むしろ僕達、何で今まで
気付かなかったんでしょうかね?
…1年じゃなくて、
灰羽君より背が低くて、
髪型がちょっと個性的で、
灰羽君が霞むほどの男前といえば、』
1年2年、みんなが顔を見合わせて
頷きながら声にしたのは、
『『『黒尾センパイですよね~!!』』』
『…うぅ…またしても俺の前に大きな壁…
バレーならまだしも、プライベートでも
黒尾センパイを越えられないとは…』
がっくりとうなだれる山本君。
『いや、黒尾センパイは別格ですから!』
『リエーフに負けるよりはマシじゃない?』
『え、えぇと…ぼ、僕は、
山本先輩には山本先輩の良さが
あると思います!
そもそも恋愛は勝ち負けではないし、
…と僕が言っても説得力ないですね…』
などと、みんなで適当に?!
山本君を慰めている間、
灰羽君は黒尾先輩を彼女の前に呼び、
興奮と恥ずかしさで
キラキラした瞳の彼女と、
慣れた仕草で対応する黒尾先輩を並ばせ
ツーショット写真まで撮ってあげてから
颯爽と仲間のもとへ戻ってきました。
『どうしたの、リエーフ。
選ばれなかったのにご機嫌じゃん。』
『いやぁ、さすがのオレも、
黒尾センパイなら負けも認めますっ。
…てか、そもそも、黒尾センパイとオレじゃ
見た目もキャラも逆のタイプだし。
オレ、負けたわけじゃないっすね。
むしろセンパイを紹介して
ツーショットまで撮ってあげた、
俺の懐の広さが噂になるかもだし?!
黒尾センパイが卒部する頃には、
バレーも人気も、
俺が黒尾センパイの後継者に
ご指名されちゃう未来が見えてきたっっ!
ね、山本センパイ!
…あれ、どしたんですか?
なんか、元気なくないですか?』