第8章 ~ネコ達、恋に大騒ぎ。~
芝『あの、灰羽君…
あそこに来てる女子、その人じゃない?
誰かを探してる感じだよ?』
芝山君の言葉を聞くなり、
その場にいた全員が
(微妙に自分なりのキメ顔で 笑)
体育館の入り口を振り返ると、
確かに、
体育館を覗き込んで誰かを探してる、
1年生らしい初々しい女子がいます。
虎『うぉ~っ、かわいいじゃん❤️
ほらほらリエーフ、
女子を待たせんじゃねぇ、早く行け!
んで、俺は今日、部活の後なら
一緒に帰ってもいいって伝えてこい!』
リ『山本先輩に紹介するくらいなら
玉砕覚悟で俺が先に告白しますっ!
あぁ、何で俺がこんな役目に…(涙)』
でっかい体でグズグズ言いながら
重たい足取りで歩きだす灰羽君と、
その後ろ姿を
キリリとした顔で見送る山本君。
虎『研磨、そろそろ練習始めるかっ。
彼女の期待に応えてやんねーと。
俺の魅力は見た目だけじゃなくて
バレーの技術もセットだからな。
"エースの彼女"って、誇らしいだろ!』
研『…コートはもうしばらく、
3年が使うんじゃない?
そこらで対人パスでもしとけば?』
虎『バカっ、対人パスじゃ、
俺の真のカッコよさは伝わらねぇっ!
彼女のあの恋する瞳に、
俺の輝きを焼き付けてやらねぇとっ!!
見てろ1年、これが恋の実る瞬間だ!』
最高級のキメ顔ドヤ顔で吠える山本君と、
面倒くさそうな研磨君と、
やっぱり本当は
自分のことを好きなんじゃないかと
密かな期待にワクワクしている犬岡君と、
誰の味方をしていいかわからず、
必死に空気を読もうとする芝山君と、
どうでもいいけど
このわちゃわちゃした雰囲気を楽しんでる
その他大勢の1年2年が、
揃って体育館の入り口を振り向くと、
ちょうとその時、
彼女が灰羽君に
『ね、あの人、名前、なんていうのかな?』
…みたいなことを聞いてるっぽい
トキメキ500%の顔で
そっと指差そうとしていました。
そう、まさに、ご指名の瞬間。
鼻息荒い、山本君。
色恋話には興味ないけど、
なりゆきには興味が湧きつつある研磨君。
いつでも走り出しそうな犬岡君。
みんなのことが心配そうな芝山君。
ドキン、ドキン、ドキン。
みんなの鼓動が聞こえてきそうな中、
まさか、そんなに注目されてるとは
まったく知らない彼女が、
体育館の中を、指差しました。