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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)



『ねぇねぇ、ぼく、お腹すいたぁ。』

『あたしも、ご飯、まだぁ?』

チビ達の声が響く。

『ねぇ静、まず乾杯しましょ!』

『そうね!皆さん、
今日は飲み物も食べ物も全部、
私からのふるまいだから、ご遠慮なく!』

『さすがママ、太っ腹!』

『そのかわり、二次会はぜひ、
8階の"一人静"をご利用くださいませ❤️』

『商売上手っ!』

『そりゃそうですよ。
"一人静"を繁盛させて、子ども達を
お腹いっぱいにしてあげなくちゃ。』

そうなんだ。
今、母さんは、
これまでになくイキイキと仕事をしている。

俺が進学してからは
急いで帰って家事をする必要がなくなり、

俺が就職してからは
俺の学費や仕送りの必要もなくなった。

大切な人を亡くした時、
"何のために店を続ける?"
そうやって悩んでいた母さんにとって、

今、"一人静"は、
"恩返しのための場所"になっている。

『私が店を続けてこられたのは、
一静を育ててくれた街のみんなのお陰。
今度は私がお返しする番だから。』

…そんなわけで、
一人静のホステスさんは、
シングルマザー大歓迎。

その子供達の場所〜ただいま〜は
今のところ運営も順調だし、

"一人静"の常連さん達の力や知恵を借りて
夜の町や地域の活性化にも取り組んでいる。

綾ちゃんは、
そんな母さんの生活の後方支援?のために
あのアパートを引き払い、今は、
母さんと一緒にマンションに住んでいて、

ちゃんと給料をもらって、大好きな家事や
子供達の世話を仕事にしている。

…みんな、逞しい。

家族を手放して
自分を見失ってた綾ちゃんも、
大切な人を亡くして
生きる力を失っていた母さんも、

ちゃんと自分の力で歩き始めた。

…俺の嫁さんだって、
愛する人となら
駆け落ちする覚悟の出来る人だ。

今はまだ、立ち止まってる途中だけど、
きっと根っこは
母さんや綾ちゃんと同じ。

必ず、
過去より未来に目を向けられる日が来る。

俺はそれをいつまだって待つし、
彼女が新しい毎日を歩こうと思った時は、
一番近くで見守って、支えるから。

心の中に住む人には敵わないけど、

彼女を託してくれた、俺と同じ名前の
元旦那さんと、ずっと一緒に。

いつも影から
俺や母さんのことを支えてくれてた
あの人…父さん…みたいに。

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