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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)



『おっ、一静!』
『一静兄ちゃん、おかえり!』
『いっせーくん、遅いよぉ!』

懐かしい顔、顔、顔。

『静ちゃん、綾ちゃん、
一静が帰ってきたぞー!』

おっちゃん達が呼びかける声に応えるように
奥の調理場から二人の顔がのぞいて、

『一静、』『いっちゃん、』
『『おかえりなさい!』』

綺麗に化粧した
着物姿の母さんが、近づいてくる。

『あれ、母さん、仕事中?
ここでサボってていいの?』

『呼ばれたら上がるからいいのよ。
だって今日は特別だもの。』

俺の隣の嫁さんが、
母さんに向かって深々と頭を下げた。

『あの、初めまして。
ご挨拶が遅くなってしまって
本当に申し訳ありません。私、このたび…』

『やだわ、頭、上げてください。』

彼女の肩に手を添え、
そっとかがんで顔を覗きこむ母さん。

嫁さんが、恐る恐る、といった感じで
顔をあげる。
…確かに、仕事モードの母さん、
ちょっと迫力あるからな(笑)

母さんはニッコリ笑って言った。

『私、一静の生みの親の、静です。』

生みの親?

『そして、ここにいる皆が、
一静の育ての親で、家族、よね?』

振り返った母さんに、
ぱちぱち、と、拍手がわく。

『そしてそして、あちらにいるのが、
私の大切な親友で仕事のパートナーで、
一静の…一静の、あら、
綾のこと、何て紹介したらいいの?』

え?
それ、俺に聞く?!

『俺の、』

初恋の人、とは口が裂けても言えないけど、

『俺の、』

もう1人の母さん、って言おうとしたら、
小さい頃から世話になってるおばちゃんが
大声で割り込んでくる。

『"もう1人の母"は、ダメよ!
オムツの頃から世話してきたあたしたちが
その座は譲らないから~(笑)』

『ええっ、ダメ?じゃあ、』

…綾ちゃんは、ええと、俺の、

『俺の“胃袋担当”?』

そういうと今度は、

『えーっ?僕の胃袋も~!』
『あたしも綾ちゃんのご飯が好き!』

と、チビッ子達からクレームがきて
みんながドッと笑った。
綾ちゃんも、笑ってる。

…綾ちゃん、ここにちゃんと
自分の居場所、作れたんだな。

なんか、俺まで、嬉しいじゃん。
あ、でもこの気持ちは
あくまでも"家族"としての気持ち。
もう俺も、妻帯者だから(笑)


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