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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)



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"心配しないでいってらっしゃい"
そう言って
俺を見送ってくれた母さんだけど、

大事な人を亡くし、
さらにそれから間もなく、
息子まで遠くに行ってしまったことは
自分で思っていたよりも
相当、気力を失う事態だったようで、

しばらくの間、
脱け殻のようになっていたらしい。
病気、というよりも、
仕事や生活に力が入らない、というか。

あんだけ毎日
俺のために朝飯と弁当を作り、

あんだけ毎晩
隠れ家みたいな小さな店を
"静ママ"として繁盛させてたのに、

自分のために飯を作るのが面倒になり、
仕事で笑顔を作る意味が見つけられず、
さらにそんなを自分を許せなくて、

店を辞めようと考えていたそうだ。

それにもかかわらず、
ずっと店で働いてきてくれた仲間達は

母さんが元に戻ることを信じて、
みんな、
自分の家族を留守番させてでも
交代で出勤し、店を開けてくれた。

そして
それを知った綾ちゃんが、
"家で留守番する子ども達に"と
おやつや夜食を作って持たせたり、
小さい子が留守番していると聞いて
綾ちゃんの家で預かったり…

そんなみんなの
"一人静"や"静ママ"への想いを聞いた
常連さんの一人から、
ある提案が持ち上がる。


"福利厚生の一環として、
スタッフの子ども達が集まって
食事できる小さな場所を作ったら?"


その提案に最初に反応したのは、
母さんではなく、綾ちゃんだった。


『静、それ、私にやらせて!
私、自分のお店もパートも辞めて、
その仕事に全力、注ぎたい。お願い!』

夜の商売をしている女性に、
シングルマザーはとても多い。
女性が一人で生きていくことの苦労は
母さんも、綾ちゃんも、
よく知っているわけで。

『そんな場所があれば、
お店のスタッフも安心して働けるでしょ?』

そう言われると、
母さんもyes、と返事せざるを得ない。

こうして、
母さんより綾ちゃんのヤル気で
実現に向けて動き出したのが、
この場所の始まりだった。

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『じゃあ、さっきの子たちは
お店の方の息子さん?』

『小学生の方はね。
…この話には続きがあってさ、』

『?』

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