第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)
木兎のことを"単純"だと思っていたけど
本当は"直感と行動力のハイパーリンク"
なんじゃねーかと
初めて思った。
もしそうなら、コイツ、スーパーマンだ。
思い出す。
初めて3人で居酒屋で飲んだ時のこと。
あの時綾ちゃんは
付き合いを迫る木兎を
『つきあったら楽しすぎて
勉強が手につかなくなる。』
『こんなモテる人とつきあったら
浮気されそうで心配。』
…と、バッサリ切った。
よく覚えてる。
忘れるはずがない。
なぜならその言葉は
俺が本気で女を愛せない理由と
ぴったり一致したからだ。
本気の恋におっこちたら、
バレーに費やすべき時間を
彼女に使ってしまう。
そうやって
100%の努力をしなくなった俺は、
誰かに抜かされてしまうかもしれない。
…だって俺は、天才じゃないから。
本気の彼女が出来たら、
きっと俺は彼女を失いたくなくて
自分を偽ってでも"及川王子"で
居続けなきゃならない。
…だって俺は、
バレー以外に取り柄なんかないから。
綾ちゃんが
木兎を断った理由を聞いたときから、
彼女は俺にとって
"特別な人"になっていたんだ、と
今、ハッキリ知る。
俺と同じような弱さを抱えてる人。
…もしかしたら、わかりあえるかも、と。
だけど木兎は、その理由を
自分の行動と情熱と愛情で
ひとつひとつ丁寧に取り除き、
さらに綾ちゃんのいいところを
たくさん見つけて。
わかりあう、んじゃなくて
救い上げた、んだ。
きっと綾ちゃんは
木兎と出会って世界が変わった。
生きていくのが楽しくて
頑張ることがラクになったはず。
『…コタローちゃん、ズルい。』
『は?なんで?』
『何にも考えてなさそうなのに、
本当はサラッと救うスーパーマンなんて
カッコよすぎる。』
『ん?え?俺が?あれ?どっち?
それ、ほめてる?悪口?』
キョトン、としてる木兎。
"俺のことも、救ってくれよ。"
…そんなこと、言えるわけないな(笑)
『なーんでもないよっ。ね、
コタローちゃん、これからデート?』
『イヤ、今日は用があるんだって。
…あ、そーだオイカワ、意見、聞かせて!』
木兎に連れられて、
日暮れの街を歩く。
行き先なんかどこでもいい。
ただ、
木兎の光に照らされていたかった。