第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)
『はいはい、わかったよっ!
でもこの及川 徹を用心棒がわりにするなんて
高くつくから、覚えときなよ?!』
『今度の試合でバリッと決めるから。
そんで一気にお返しするぜいっ。』
キラリン、と
星のマークが飛び出すくらい
木兎の輝く瞳が思い浮かんだ。
『決めなかったら許さない(笑)
じゃあまた、明日。学校で。』
通話を終わらせ
スマホを綾ちゃんに返す。
『ほんと、二人はどこまでも
バレーで繋がってるんだね。』
『…だね。』
バレーで繋がっている。
岩ちゃんとも、
マッキーやまっつんとも、
もちろん木兎とも、
バレーがあったから繋がってる。
『バレーしてなかったら、ホント、俺、
ただのロクデナシだったよ、きっと。』
『及川君は、ただのロクデナシなんかじゃないよ。』
『…そうかな?』
綾ちゃん。
俺のこと、
ロクデナシじゃないって言ってくれる?
俺のこと、何か1つ、認めてくれる?
『顔は自慢できるロクデナシ、でしょ?』
『………えーっ?!』
『え?いや、ほ、ほめてるつもり…』
『どこがっ?ほめてない、全然っ!』
『でも、顔だけは自慢だって、
自分で言ってたじゃない?』
『それは謙虚さっ!
自分で言うからいいんであって、
他人が言ったら、悪口っ!!』
『そ、そうかな?そうなのかぁ…』
『これだから、お勉強しかしてない人は困るっ!
心の傷は、薬じゃ治せないんだよ?!
及川さん、傷付いたっ!!』
『ごめんっ!ごめんごめんごめんなさい!』
『…悪いと思うなら、』
いつもの俺なら、きっと
『お詫びに、キスして。』
…とか言ったと思う。
でも、不思議と今、俺の心から
そんな悪魔は顔を出さなかった。
『悪いと思うなら、木兎には絶対、
そんなこと言わないでよ?!
アイツが凹むと、俺も大変だから。』
綾ちゃんが、笑いながら返す。
『そう思うなら、また相談にのってね。
私、男心、わからないことばっかり。
なにしろお勉強しかしてないから(笑)』
『…俺、お勉強、したことないから(笑)』
二人で笑う。
なんか、初めての感覚だった。
自分のダメなところを思いきり笑ってしまえて
むしろ、気持ちが軽い。
『…行こう。駅まで送る。』
全然、下心のない夜道が
こんなに楽しいって、知らなかった。