第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)
♪ピロリロリロリロリン、
ピロリロリロリロリン…♪
恐ろしくシンプルな呼び出し音で
綾ちゃんのスマホが鳴る。
ふと、木兎の着信音を思い出した。
♪恋をしたーのあ、な、た、のぉ♪
…あのメロディ。
綾ちゃんは、知ってるのか?
『あ、木兎君だ。ちょっと、出ていい?』
もちろんどうぞ、と手で示すと
綾ちゃんが小さな声で
スマホに向かって話し始めた。
目の前にいる綾ちゃんの声は
聞き取れないくらいなのに
目の前にいない木兎の声は
聞きたくないのに聞こえる(笑)
『綾、こっち終わったら
そっち合流しようと思ってたんだけど、
久しぶりに集まったから
今からみんなで飲みに行こうっ…
てことになったんだよ~。
綾、一緒に来ねぇ?俺の仲間、紹介するしっ。』
『私は大丈夫だよ。
木兎君、飲み、行っておいでよ。
私は、今日じゃなくてまた今度誘って。
急に友達にまで会う勇気、ないもん。』
『遠慮すんなよー。
あかーしも木葉も、家族みてーなもんだから。
きっといろいろ助けてくれるぜ。
仲良くなっとけよー。』
綾ちゃんは
何気ない顔で言う。
『大丈夫だよ、相談相手なら、及川君がいるから。』
…"及川君がいるから"、だって。
木兎だけじゃなくて
綾ちゃんにも信頼されてしまった。
嬉しいような、
息苦しいような。
『んぁー、まぁ、そっか。
じゃ、今度。今度、行こ。
ちょ、オイカワにかわって。』
はい、と綾ちゃんが俺にスマホを差し出す。
『コタローちゃん、来ないの?』
『ごめんなぁ、こっち、超久々の顔ぶれでさぁ。
俺がいないと始まんねーってみんなが言うんだよね。』
…さすが元チームメイト、
木兎の快感スイッチ、わかってる。
家族並みの連帯感、阿吽の呼吸(笑)
あ、岩ちゃん、元気かな…
『綾ちゃんには言っといたよ、
木兎はいいヤツだから、安心して愛されな、って。』
『サーンキュー!愛してるぜ、相棒!』
『気持ち悪い(笑)』
『あ、オイカワ、帰りさぁ、
綾を駅まで送ってやってよ。
駅まででいいから。家まで行くなよ?』
…大きな声が聞こえてるんだろう。
目の前で綾ちゃんが笑ってる。