第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)
えぇっっっ?
なんで木兎ナシで
俺と綾ちゃん二人で
飯、食いに行かなきゃなんねー?
…綾ちゃんだって、困るだろ?
だけど木兎は
そんなことは全く気にしてない顔で
『じゃ、練習終わったら
オイカワから連絡させっからさ!
しっかり、俺の取り扱いレクチャー
聞いてといてくれよ~。
ん?わかった。間に合ったら、俺も合流する。
んじゃね~、愛してるっ♥』
勝手に通話を終わらせると
ホイ、とスマホを俺に渡して
『早く練習しよーぜっ!
次の試合に綾、誘おうと思って。
俺達のスゲーとこ、見せちゃろっ。』
肩を組んで俺を連れていく木兎。
初めて、
木兎のことを"怖い"と思った。
真っ直ぐな性格は、知っている。
誰に対しても、表裏がないことも。
付き合いだしてスグなのに
こうして、彼女と俺を
…俺が女にだらしないことも知ってて…
二人きりで会わせる、なんてことが
俺と彼女に対する
絶大な信頼だ、ということもわかる。
だから、怖い。
もし岩ちゃんなら
(マッキーもまっつんだって)
自分の彼女と俺を二人きりで
夜の街に放ったりしない。
俺を信頼してないわけじゃなく、
俺を知ってるから。
もしかしたら
間違いを起こしてしまうことも、
そうなったら俺は
仲間もバレー部での居場所も失って
どうしようもなくなることを
彼らは知ってるから。
アイツラは、俺の全てを知ってて
その上で、俺を守るために、
危険から遠ざけてくれてた。
でも、木兎は違う。
あんなに俺と一緒にナンパをしてても
そこはわきまえてると、俺を信じてる。
自分の女に俺が手を出すかも、なんて
チラリとも疑ったりしてない。
"信頼"という柔らかい鎖で
縛られた気がする。
俺は、絶対、裏切れない。
木兎を裏切ったら、
俺は、相棒もバレーも、失う。
『踏みとどまるのも、
踏み外すのも自分次第じゃん。』
そう言われてる気が。
…その日の練習は、
俺の心の揺れを表に出さないように
必死だった。
その分
木兎の小さな動きにも気付けて、
結果的に、とても息があった。
はた目には
"絶好調の二人"
"最高のコンビ"に見えてたと思う。
改めて、思う。
今の俺には、木兎が必要だ。
裏切れない。
綾ちゃんには
指一本、触れないようにする。