第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)
てっきり彼女は、ちょっと迷惑がってる、
くらいに思っていたのに
本当は嬉しいみたい…というか
むしろ好きみたいだ、ということが
軽いショックだった。
ショック、だ。
全然似合わないと思ってたのに。
木兎の一番の相棒は、
俺だと思ってたのに。
この間まで、3人、
同じバランスだったのに。
…そして、
なんだかんだいっても
二人がうまくいけば、
木兎の調子があがるから
俺にとってはそれが一番よくて、
そのために手伝ってきたはずなのに、
なんで、
うまくいった二人を見て
俺は悔しい思いをしてるんだ?
わからない。
誰に対して悔しいのか。
結局、いつものように
欲しいものを手にいれた、木兎に対して?
最初は全く気のない振りをしてたのに、
口説かれたらまんまと陥落して、
しかも案外、嬉しそうな彼女に対して?
それとも、思い通りの展開のはずなのに
なぜか今、心を乱してる自分に対して?
とりあえず、聞かずにはいられない。
『どーいうこと?
どうしてつきあおうと思ったのさ?』
『んー、それは、』
電話の向こうの彼女が
俺の質問に答えようとしたとき、
体育館の方から、大きな声がした。
『オーイーカーワー、どーこーだー?
もしや、サボり?オイカワくーん…
…なーんだ、いるじゃん。』
木兎だ。
近づいてくる。
飛び跳ねるように。
ここに綾ちゃんはいないのに、
すっげーキラキラの絶好調オーラを
ふりまきながら。
『なぁにやってんだよ、早く練習しよーぜっ!』
『…綾ちゃんと話してんだけど。』
『なぬっ!俺のこと?ちょ、オレも!
…綾、もう及川に相談事?
俺、なんか迷惑かけた?違う?
そっか、よかったぁ♥』
俺のスマホを取り上げて、
表情筋をメロメロに崩壊させながら
話してる姿は、まさに"恋の始まり"。
『…俺の取り扱いのコツを聞いてた?
んなこと、電話じゃなくて
直接聞けばいいじゃん。
だって、その話、長くなるだろ?
もう、練習、始まってっから。
オイカワいねーと、俺、練習、出来ねぇの。
…今夜?ゴメン、今夜は俺、ダメだ。
高校の頃のバレー部の仲間と
集まる約束、してんだよー。』
そして、続けて言う。
『いいじゃん、今夜、
オイカワと飯でも食いながら、
俺の取り扱い、レクチャーしてもらってよ!』