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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)



『ただい…』

いつも通り
誰もいない部屋に声をかけて、
違和感を感じた。

靴。

ハイヒールが、玄関に二足。
一足は母のものだ。
もう1つは、初めて見る。

…客?
いやそれより、母さん、仕事は?

奥のリビングから
笑い声が聞こえる。

いつもと違う状況に戸惑って、
とりあえずそっと細くリビングのドアを開け
声だけかけた。

『母さん?』

『あーっ、帰って来たぁっ!
一静、おかえり!』

楽しそうな、母の返事。

『なんで?仕事は?』

『今日は予約が11時からだから、
その時間まではお店はみんなに任せて、
今、ここは特別女子会開催中なの!』

『家飲み、珍しいじゃん。』

『だってほら、一静も久しぶりでしょ?
挨拶しなさいよ〜。』

母の向かいに座っている誰かは
俺の知ってる人らしい。
細く開けていたドアを奥まで開く。
母と同じくらいの年齢の女性が
俺を見て、声をあげた。

『きゃー、大きくなってるっ!
でも下がり眉、変わってなーい!』

母と似た雰囲気。
…どっかで会ったこと、あるような。

『もう忘れちゃった?
やだなぁ、あんなになついてたのに。』

なついてた?
ずいぶん前の知り合い?

『おむつも変えてあげてたんだよ。
でももうずーっと前のことだもんね、
覚えてないかなぁ、いっちゃん!』

いっちゃん。

俺をいっちゃんと呼ぶ人が、
ずいぶん前にいた気がする。

もしかして、

『…綾ちゃん?』

懐かしい。
久しぶりに口にする名前。

『わぁ、覚えててくれた!嬉しい!』

そう言って、
ふわりと下がった目尻と、
きゅっと口角の上がったキレイな笑顔。

俺の記憶より少しふっくらして
うっすらとシワもあるけど、
…うん、確かに、綾ちゃんだ。

『マジで綾ちゃん?!久しぶりすぎ!』

ドアから首だけ出してた俺を、
綾ちゃんが手招きする。

『ね、こっちおいで!
制服姿、見せなさいよ!』

『やーだ。俺、制服、似合わねぇもん。』

『そういうことじゃなくて、
成長を実感したいの。おいで!』

『やだ。着替えてくる!』

ドアをバタンと閉めたら、
向こうから、笑い声がした。

『恥ずかしがる年頃なの?』

『思春期、思春期、成長期!』

…家がこんなに賑やかなのは久しぶり。
母の笑い声が、嬉しかった。

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