第5章 ~コータロー君の、初シツレン~(木兎 光太郎)
『コータロー、僕達、
小学生になったらバレー、やろう。
そしてさ、スッゲー上手になったら、
コータローは大人になってもう一回、
綾センセーにカッコいいとこ見せるんだ。
そしたらさ、もしかしたら綾センセー、
コータローのこと好きになるかもだろ。』
賢太郎君の提案に、
さっきまでの涙顔はどこへやら、
俄然、ヤル気の光太郎君。
光太郎君の負けず嫌いを誰より知ってる
賢太郎君ならではの前向きな提案に、
お母さんも園長先生も、
そして綾先生も感心しました。
賢太郎君が、ママに両手をあわせます。
『ね、ママ、お願い。
僕たち、小学生になったら
バレーさせて。いいでしょ?』
『もちろんよ!』
もう光太郎君も、泣いてなんかいません。
いつもの自信満々の顔をして。
『よーし、綾がホレるくらい、
オレ、強くなるから!
やっぱりオレと結婚すればよかった、
…って思った時は、
エンリョしないで言えよ!
オレはいつでも待ってるぜ!』
『うん、わかった。
だから光太郎君も賢太郎君も、
強くて優しくていい男になってね!
先生の自慢の仲間1号、2号だから!』
二人がうん、と頷いたのを見て、
園長先生はポン、と二人の頭に
手を乗せて言いました。
『よし、そのためにもまず、
幼稚園を卒園してもらおうかな。
さ、綾先生と二人は
そろそろ準備しましょうか。』
園長先生に促され、
綾先生が
右手に光太郎君、
左手に賢太郎君を連れて
お部屋に入っていく姿を
お母さんは眩しい思いで見ていました。
『園長先生、
3年間、ありがとうございました。
最後の最後までご迷惑をおかけして…』
お母さんが、園長先生に頭を下げます。
『いいえ、こちらこそ。
二人のお陰で本当に楽しかったです。
二人とも、オオモノになりそう!』
『賢太郎はともかく、
光太郎は…どうでしょうね?
ちょっと個性が強すぎる気が(苦笑)…』
『そんなことないですって。
光太郎君はむしろ、その個性で
スーパースターになれるタイプですよ。
…うちの卒園生として、きっと私たちを
いつか誇らしく思わせてくれますから。
今日の姿、ぜひ
しっかり見ててあげて下さいね。』
お母さんは、
園長先生の言葉に頷き、
深く一礼して、
ホールへと戻っていきました。