第5章 ~コータロー君の、初シツレン~(木兎 光太郎)
『ねぇ、光太郎君。
今日で幼稚園生、おしまいだね。
卒園、おめでとう。
先生はね、
光太郎君と賢太郎君の先生になれて
毎日、とっても楽しかった。
本当はまだまだ一緒にいたいよ。』
『…だったら、
オレとケッコンすればさぁ…ふぇ~ん…』
『でもね、
二人のランドセル姿も見たいし、
先生もお嫁さんになりたいの。
だからこれからは
"先生と幼稚園生"じゃなくて
"ふくろうの森幼稚園の時の仲間"で
ずーっと仲良くしてくれないかな?
仲間ってね、何年たっても、
ずーっと変わることのない、
大事な人のこと。
会いたい時にいつでも会おうよ。
私も、ふたりに会いたくなったら
会いに行く。』
『…ずーっと?卒園しても?』
『そう。ずーっと。
だから卒園式はさよならじゃないの。
明日からは"仲間"だよっていう区切り。
ね、それなら寂しくないよね。』
『…わかった。
そのかわり、オレ、仲間1号な。
賢太郎は仲間2号。それからさ、
綾がケッコンするヤツは
仲間にはしねーけど、いいか?』
『(笑)いいよ。』
目のふちギリギリまで溢れそうな
涙をこらえている光太郎君を見て、
賢太郎君が言いました。
『ね、綾センセー、
その、ケッコンする人、どんな人?』
『え?あのね…』
綾先生は、
ポッと頬っぺたを赤くして。
『優しくてね、かっこよくて、
楽しくて、頼りになって…』
プウッと膨れる光太郎君のほっぺ。
幸せな先生は、つい、
遠慮なくノロケてしまうから、
お母さんと園長先生は
また光太郎君が泣き出すんじゃないかと
ドキドキしながら見てます。
すると、賢太郎君が言いました。
『それならコータローと一緒だよ。
コータローと違うところは、どこ?』
みんながドキッとした顔で
賢太郎の顔を見つめました。
とっても真剣な、賢太郎君。
『…え?違うところ?
えぇと…あ、バレーがとっても上手なの。
先生とおんなじチームなんだけど、
背が高くてバレーしてる時も
とってもカッコいいのよ。』
『センセ、バレーってなぁに?』
『ボールが地面に落ちないように
手を使ってするスポーツ。』
『それ、子供でも出来る?』
賢太郎は真剣です。
『えぇ、小学生のチームもあるわよ?』
それを聞いた賢太郎君は、
光太郎君に向かって言いました。