第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)
もやもやとした気持ちで
目の前のグラスを見る。
小さな三角の中に、
透明感のあるグリーン。
口に運ぶと広がる
ライムの香り。
…あぁ、
気持ちもサッパリしたい。
ジャケットのポケットから
スマホを取り出すと、
木兎に、スタンプを一つだけ送った。
最近人気のタレントが
小首をかしげて、
頭の上に、?マークを浮かべたスタンプ。
『どうだよ?うまくいってる?』
…そんな気持ちを込めて。
スマホの画面をいじりながら
ゆっくりグラスを傾けていると、
間もなく、返事がきた。
スタンプが、続けて3つも。
1つめは、
熱いキャラと発言で有名な
元テニスプレイヤーが、
親指をたてて"GOOD"と言ってるヤツ。
2つめは、
俳優の描いたヘタウマな犬が
ジャンプして喜んでるヤツ。
そして3つめは、
ディズニャーランドのキャラクターの
メスネズミが、
ハートをまき散らしてるヤツ。
…木兎、こんなかわいいスタンプ、
どんな時に誰に使うんだ?
おもわず、頬が緩んでしまう。
そして、そんな自分に苦笑い。
木兎の真っ直ぐさには、
ほんと、やられっぱなしだよ。
例え当て馬にされてたとしても
木兎が調子がいいなら、
それが一番、いいんだ。
木兎が綾ちゃんと付き合うなら、
俺は俺で、また、気楽で贅沢な
"女の子 よりどりみどり"な暮らしに
遠慮なく戻れる。
スマホの電話帳画面の
"あ"行から順番にスクロール。
愛原…秋田…浅井…あ行、男ばっかりだな…
浅原…雨宮…アリスちゃん…
ん?
"アリスちゃん"って、誰だ?
全然、覚えてないけど…ナンパした子か、
どっかの店のおねぇちゃんだろ。
電話してみるか。
…呼び出し音を聴きながら、
ギムレットを一気にあおって。
勢いつけねーと。
『もしもし~、ウソ~、
オイカワ君から連絡くれるなんて
ウソみたぁい。なぁに、どーしたの?』
…やっぱり、全然思い出せないけど(笑)
その方が都合いいような気がするから
『アリスちゃん、元気にしてたぁ?
俺、今、なーんか無性に
アリスちゃんに会いたくなってさぁ。
今、どこ?これから、会わない?』
『行く行く!どこ?』
…向こうから来るってことは
キャバ孃じゃねぇな。
ま、いいや。
朝まで俺の相手をしてもらう。
女なら、ヤレれば、誰でもいい。
