第4章 ~いつか叶う、恋~(西谷 夕)
急ブレーキをかけるように、
西谷君が私たちの前で立ち止まる。
『おぅ、カオリ、森島!
お前ら、大丈夫だった?合格?』
『なに言ってんのよ!』
カオリが西谷君を鞄でバコンと殴る。
『それはこっちのセリフ!
あんたに心配されなくても、あたしら、
ちゃーんと余裕で合格してるっ!
ニシノヤは?まさか、不合格で、
気持ち建て直すのに今までかかったとか…』
『なんでだよっ!
俺、合格100%って言っておいただろ!
ラクショー、ラクショー!
いや、合格発表見に行って、すぐこっち
来るつもりだったんだけどさぁ、
体育館でバレー部が練習しててっ!
ついつい、外から覗きこんでたら、
こんな時間になっちまったってわけで!
…んー、やっぱいいわ、烏野!』
『ニシノヤの理想のチームだった?』
『それより、マネージャーが!
超 美人!あんな美人がいるチームで
毎日バレー出来るなんてさぁ❤️
しかも、学校行けば、
俺好みの制服姿も見られるわけだろ?
くーっ、早く、学校、始まんねぇかな。
毎日、ローリングサンダーだぜ!
ビバ、ハイスクールライフ!
俺の母校、烏野、万歳!』
『…ローリング、サンダー?』
『なんで、まだ入学もしてないのに
母校なのよっ!』
私たちの言葉に被せるように、
三階から担任の先生の声が聞こえた。
『おお、やっと来たか、ニシノヤ!
うちのクラスで報告がまだなの、
あとはお前だけだぞ!早くあがってこい!』
『あー、すぐ行きますっ!
…てなわけで、俺、報告してくっから!』
砂ぼこりを巻き上げるような勢いで
西谷君は校舎の中へ消えていく。
『…アイツ、合格した途端に
嬉しすぎてバカに戻ったんじゃないの?
何言ってんのか、意味、わかんないし。』
『喜びがあふれでてたね(笑)』
『あふれすぎ。ダダモレ。おもらし。』
『カオリ、言い過ぎ!』
あまりの遠慮のなさがおかしくて、
笑ってしまった。
『…でも、よかった。』
『だね。誰か一人でも落ちてたら、
やっぱり自分のことも喜べないしね。』
『うん。』
…他に話したいこともあるのに、
なんだか言葉に出来なくて、
でも、言葉にしなくたって
カオリなら、
ちゃんとわかってくれてる気もするし。
なんだろ、
この胸がいっぱいな感じ。