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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第4章 ~いつか叶う、恋~(西谷 夕)



それからの一ヶ月は、
学校中がそわそわした雰囲気で
慌ただしく過ぎていった。

すべては、卒業に向かって動く。

一つ一つの行事に
"中学校最後の"という言葉がついて
最初はいちいち、切なくなってたけど

もう、最後の方は、
"中学校最後のインフルエンザ"とか
"中学校最後の忘れもの"とか
"中学校最後の居眠り"とか
"中学校最後の遅刻"とか
"中学校最後の寝癖"とか

くっだらないことにも
わざわざその言葉をつけて
みんな、ゲラゲラ笑ったりしてた。

…三年前、小学校を卒業したときは
そんなに悲しくなかったんだよね。
ほとんど、同じ中学に進むし、
別に、好きな人とかもいなかったし、

だから、
"中学校の卒業式"を迎えたとき、
自分がどんな気持ちになるのか、
まだ、よくわからなくて。

『卒業式の時、告ったら?』と
カオリに言われたことも、
どうしたらいいか決めきれないまま、
毎日、毎日が過ぎていって、

"あと1ヶ月で卒業"は

"あと10日"になり
"あと1週間"になり

"あさって"から
"あした"になり、


そして
"今日"になった。

今日、私たちは、

千鳥山中学校を卒業する。



…卒業式。
一人づつ、卒業証書をもらう。
西谷君は、誰より元気に返事をして、
歌も誰より大きな声で歌って、
会場の笑いを誘っていた。

卒業式の後、
男子バレー部の後輩が挨拶に来たり、
女の後輩が何人か、
プレゼント持ってきたり、
同じ学年の女子が一緒に写真とったり、

西谷君は
そうやってずーっと誰かに囲まれてて、
その誰とも同じように明るく接してて、

西谷君にとって、
男子も女子も、後輩も同窓生もみんな
同じ『千鳥山の仲間』なのがわかる。

いつ、どんな時も、西谷君は西谷君。

あまりに晴れ晴れとしたその姿に、
見ているこちらも気持ちが晴れて、
私、泣いちゃうかな、と思ってたけど、
予想外に、泣かなかった。

告白も、どうでもよくなってた。
あんまりガン見してると怪しい…って
わかってるけど、でも、出来る限り
西谷君のことをを見ていたかった。

トン、と背中を叩かれる。
カオリ。

『いいの?このままで。』

『うん。…明日が、1番大事だし。』

『そうだね。明日こそ、本当の別れ道だもんね。』



明日は、県立高校の、合格発表の日。



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