第4章 ~いつか叶う、恋~(西谷 夕)
それからも勉強会は続いたけど
あの子からの嫌がらせはピタッと止んだ。
『あたし達がニシノヤにとって
恋愛対象じゃないってことが、
あの子にもわかったんじゃないの。』
…とカオリは言ってた。
確かにそれもあるだろうけど。
私はきっと、彼女にも、
西谷君の『真っ直ぐさ』が
伝わったんだと思う。
バレーが大好きで、
目標に向かって頑張ってて、
誰のことも"仲間"だと思ってて、
だから、
今は他のことは目に入らないし、
仲間を嫌な目にあわせたりしたら
西谷君はきっと怒る、ということ。
私と彼女は恋敵だけど、
同じ人を好きになった者同士。
だから、ちょっと、わかるんだ。
西谷君のあの真っ直ぐな心に触れたら、
きっと誰でも、それを応援したくなる。
ずっと、西谷君の"仲間"でいたくなる。
(そうやってカオリに言ったら
『そんなこと言ってたら、一生、
片想いばっかりだよ!』って笑われた。)
だから私達は、
それからも変わることなく
お互いを応援しあう仲間として、
勉強したり、
休み時間を一緒に過ごしたり、
途中まで一緒に帰ったりした。
不思議なことに?!
あの彼女以外の誰も、
私やカオリが西谷君の"特別"じゃないかと
疑う人はいなかった。
なんでだろ?
あまりにも堂々としてるから?
西谷君が、
他のみんなとも同じくらい仲がいいから?
…私に、色気がないから、かな?
『違う違う、誰が見ても、ニシノヤに
恋愛の気配が似合わないからだって!』
…と、カオリはアハハ、と笑い飛ばす。
『そう?西谷君、恋愛、似合わない?』
『でしょ?駆け引きとかサプライズとか
そういうの、絶対、出来なさそうだもん。
…なんかもう、最初っから"結婚しよう"とか
極端に熱いアプローチしそうじゃない?
アイツ、中途半端、苦手だからねぇ。』
ケ、ケッコン…
カオリの口から出た言葉にビックリする。
"西谷 綾"…一瞬、頭の中に浮かび、
恥ずかしくて顔がボッて熱くなった。
受験前なのに。
そんな遠い未来を妄想して
ホヤホヤしてる場合じゃないのに。
そう思ったのに、
夜、部屋で勉強しながら、つい、ノートに
縦書きと横書きとローマ字で
"西谷綾"と書いて
ボーッとしてしまった。
カオリの、バカっ!!