第4章 ~いつか叶う、恋~(西谷 夕)
翌日。
つとめて普通に振る舞う私と、
ニヤニヤが隠せないカオリと、
いつもと変わらず元気一杯の西谷君。
約束通り、
昼休みに集まって自習をする時間、
最初に口を開いたのは、カオリ。
『ね、ニシノヤ、昨日、
私たちが帰った後、どうなったの?』
『え?どうって、なんだよ?』
『なんの話、したのよ?』
『え?えーと、なんだっけ?
あー、バレーの話してた。
なんかさ、サーブレシーブが苦手らしくて、
コツを知りたいっていうから。
かかと少しあげて、重心、下にしてさ…』
なんだかよくわからない
専門的な話を始めた西谷君に、
カオリがバサッと聞き返した。
『そんな話ばっか?
彼女、なんかニシノヤに言いたいことがあるって
言ってたけど。』
『え?だから、それじゃねーの?
あ、あと、なんで烏野なのか、とか。
んなの、決まってっじゃねーか、なぁ。
そうそう、烏野。だからさ、早く、数学!
森島、昨日渡した宿題、どうだった?』
『え?あ、うん、よく出来てたよ。』
『マジ?!よかった!おいカオリ、
オレは進化してるぞ、お前はどうだ?』
『うゎ、上から目線、ムカつくわぁ!』
そんなことを言いながら、
カオリが私の方を見てニコっと笑う。
"ね、心配なかったでしょ?"
…みたいな顔で。
『ね、ニシノヤ、あんた、自分が
ガンバってるみたいな顔してるけど、
昼休みとか放課後にもこうやって
あんたの勉強につきあってるあたしらに
ちゃんと感謝しなさいよ~!』
『あれ、俺の感謝、伝わってねぇ?』
『伝わってこないねぇ。ね、綾?』
『え?そ、そんなこと…』
『あ、カオリには、
あんまり感謝してねぇからかな?
だってお前、邪魔ばっかじゃん。』
『なによーっ?!』
『森島には、超、感謝してるって。
ほら、こーやって俺専用の問題集まで
作ってくれてさぁ。俺の出来ねぇことを
助けてくれる人に1番の恩返しは、』
すごく真剣な、誠実な、優しい顔で。
『結果、出すことだろ?
だから俺、絶対、合格すっからさ!』
…西谷君…
嬉しくて、
ジワーっと胸があったかくなって、
そして、嬉しいのに泣きたくなった。
すごく、真っ直ぐに、優しい人。
カオリがニコニコしてくれたのも、
嬉しかった。