第4章 ~いつか叶う、恋~(西谷 夕)
考えたくなかった、けど。
『…それでもさ、
告白してフラれて気まずくなるより、
西谷君に彼女ができても、卒業まで
変わらず"友達"でいられる方がいい。
…こんなヘタレな気持ち、
カオリみたいな男前な人から見たら
情けないかもしれないけど。』
『男前、言うな~、あたし乙女っ(笑)
…わかったよ。それならそれで
ちゃんと明日、ニシノヤに聞こう。
彼女とあのあと、どんな話したのか。』
『うん。』
『だからさ、綾、フツーにしとくんだよ。』
カオリは、ピリッとした声で言った。
『ビクビクしちゃダメ。
友達でいるって決めたんなら、
例えニシノヤと彼女がつきあうことに
なってたとしても、
ちゃんと友達らしく、
笑顔で冷やかすくらいの覚悟はしてね。
…綾の代わりに私がちゃんと、
ニシノヤをイビるから(笑)』
『…うん。』
『多分、大丈夫だと思うけどね。
彼女、ニシノヤのタイプじゃないよ。』
『西谷君の、タイプって?』
『んー、少なくとも、烏野の制服着て
迫ってなければ大丈夫じゃない?』
『コスプレっ?大雑把すぎ!』
『…よしよし、元気、出てきたね。
明日もそんな感じでね。』
おやすみ、バイバイ、って言って
電話を切った。
カオリの言葉が頭のなかをまわる。
"友達でいるって決めたなら、
西谷君と彼女がつきあうことになっても
笑って冷やかすくらいの覚悟を。"
その通りだと思う。
ヤキモチ妬ける立場じゃない。
私は自分から遠慮してるんだから。
恋をするって、大変だ。
嬉しいことより、
苦しいことの方が多い気がする。
それでも、西谷君がいるから
確かに学校に行くのが楽しいし、
西谷君に片想いしてたからこそ
カオリともこんなに仲良くなれた。
『何もないより、いいよね。』
そう呟いて、自分に言い聞かせる。
例え友達でも、
一緒に過ごせて、受験に向けて頑張って、
西谷君の目標の手伝いが出来て、
今の意気地なしの私にすれば
それは何にも変えがたい大事な時間。
西谷君の"友達"で居続けることが
残り数ヵ月の私の願いでいい。
そう思った。
恋は…片想いは…
強くなくちゃダメだね。
叶うかどうかわからない想いを
強く持ち続ける勇気。
叶わなくても、相手を恨まない強さ。
私、強く、なりたい。