第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)
その日、
練習が終わってからの木兎は
誰より早く、シューズを脱いだ。
『コタローちゃん、
今日は自主練しないんだ?』
跳ねるように俺に近づいてきた木兎。
そっと耳元でささやく。
『今日さ、
今から会って返事、聞くんだ。
もうすぐ夏じゃん。
その前にカタつけようと思って。』
…俺が知らない間に、
事態が動いてたとは。
最近、彼女が忙しいらしく、
会ってないはずだったのに。
『…いつの間に?』
『先週。』
『二人で会ってたんだ?』
『いーや、電話、電話。
今、スゲー忙しいっつってたから。
このまま会わずに夏が来るの、ヤじゃん。
ダメならダメで、きっぱり諦めて次に行く。
うまくいくならうまくいくで、
それなりに付き合い方、考えて
なんか、夏の想い出、作りたいなーって。
だって多分、来年は彼女、研修医だぜ。
今よりもっと忙しくなるはずだからさっ。』
『ダメだったら、諦めるんだ。』
『そりゃそーだろ。
こんだけアタックし続けてダメなら
諦めもつくってもんさ。
"お友達"でいられるのも、そろそろ限界。
だって俺、本気で付き合いたいんだもん。
信じられる?俺、この2ヶ月、誰とも
セックスしてねーんだよ?』
友達、でいられないくらい
好き、になってたんだな…
『だからさ、
"友達"なのは、今日が最後。
明日は、"彼氏彼女"か"他人"の
どっちかになってっから。』
『…ふーん。自信は?』
パチン。指をならして。
『負け試合ってわかってたら
勝負なんかしねぇよ!
今まで2ヶ月近く、
俺の"ラブスパイク"で
攻撃し続けてきたからさっ。
綾ちゃんの鉄壁も
そろそろ崩壊前のハズっ!』
相変わらず、自信に満ち溢れてる。
『そっか。
コタローちゃんなら大丈夫だよ。』
『オイカワもそう思うっ?
俺の相棒がそう言ってくれるなら
俺、もう、無敵な気分っ。』
そう言って軽く片手をあげ、
走っていく木兎の後ろ姿は
あっと言う間に見えなくなる。
明日、
コタローちゃん、
絶好調か絶不調か
どっちかだな…