第4章 ~いつか叶う、恋~(西谷 夕)
ま、"パトロール"といっても
大したことではなく、
昼休みとか放課後とかに、
私たちの席や靴箱に近づいて
何かする人はいないかを
ブラブラしながら見張る、くらい。
『ねぇカオリ、
こんなんでタイミングよく
見つかるのものなのかな?』
と、パトロールの効果について
なんとなく疑い気味の私に
『普通の中学生のやることなんて、
私達が考えるのと同じ程度のことに
決まってるって。1週間もすれば、
きっと向こうもボロが出るはず!』
…と、
なんとなく不思議に強気のカオリ。
そう言われるとそんな気もする、と
私もついつい一緒に
パトロールを続けること、3日。
思ったより早く、"その"現場に
行き当たってしまった。
…放課後、カオリと私は、
一旦、帰ったように見せかけて
そのまま靴箱やゴミ焼却場とかを
ブラブラ"パトロール"していた。
カオリは、
不穏なことを楽しそうな顔で言う。
『あたしだったら、超 憎たらしいヤツを
困らせるのに、なに、するかなぁ?』
『えーっ?なに、それ。』
『犯人の気持ちになってみるの!
靴箱、机、裁縫箱は済んだ…
あと、残ってるのは?』
『済んだ、って(笑)あと…絵の具とか?』
『絵の具、やりやすいね。
グジャーッって、色、全部出したり
筆になんか巻き付けて使えなくしたり。』
『カオリ、嫌がらせの才能、ある(笑)
でももう、絵の具セット、置いてないし。』
『じゃあ…音楽!
リコーダーに泥を詰めるとか!』
『いやだぁ!音楽室、行ってみる?』
音楽室は、鍵がかかってた。
『よかった、リコーダーは大丈夫だね。』
『家庭科、美術、音楽…
綾、あと学校に
置きっぱなしのものがある教科って?』
『…えぇと…あ、体育?
体育着と体育館シューズ、机にかけてる。』
『…明日、体育、あるよね?
それってなんか…ヤな予感、しない?』
『まさか、って言いたいけど…』
あの、ジャキジャキにされてた
カオリのエプロンを思い出す。
こんな、もう、卒業間近な時期に
"新しい体育服買って"なんて
親に頼めるわけない。
『…カオリ、』
『綾、行こ!』
軽いパトロールのつもりだった私たちは、
事件現場に向かうパトカーのように
猛スピードで走り出した。